重要伝統的建造物群保存地区

重要伝統的建造物群保存地区(じゅうようでんとうてきけんぞうぶつぐんほぞんちく)は、日本文化財保護法に規定する文化財種別のひとつ。日本の市町村条例などにより決定した伝統的建造物群保存地区のうち、文化財保護法第144条の規定に基づき、特に価値が高いものとして国(文部科学大臣)が選定したものを指す。略称は重伝建地区(じゅうでんけんちく)、重伝建(じゅうでんけん)。

概要

文化財保護法でいう伝統的建造物群保存地区とは、城下町宿場町門前町寺内町港町農村漁村などの伝統的建造物群およびこれと一体をなして歴史的風致を形成している環境を保存するために市町村が定める地区を指す。この制度は、文化財としての建造物を「点」(単体)ではなく「面」(群)で保存しようとするもので、保存地区内では社寺民家などの「建築物」はもちろん、土塀石垣水路・石塔・石仏・燈籠などの「工作物」、庭園生垣樹木・水路などの「環境物件」を特定し保存措置を図ることとされている。

市町村都市計画法に基づく都市計画または条例により伝統的建造物群保存地区を定め、文部科学大臣は市町村の申し出に基づき、その価値が特に高いものを重要伝統的建造物群保存地区として選定することとされ、広報普及を担う全国伝統的建造物群保存地区協議会を置く。2015年は伝統的建造物群保存地区制度が法制化されて40年に当たり、累計109件を認めた

令和5年)で前年から1件増やし、山形、東京、神奈川、熊本を除く43道府県、105市町村の127地区が選定されており。}}、合計面積は4034haである。

選定基準

「重要伝統的建造物群保存地区選定基準」(昭和50年文部省告示第157号)では、選定する保存地区の基準ほか、文化庁文化財部参事官2008年、同2015年による発表。}}を次のように定めている。
  1. 伝統的建造物群が全体として意匠的に優秀なもの
  2. 伝統的建造物群及び地割がよく旧態を保持しているもの
  3. 伝統的建造物群及びその周囲の環境が地域的特色を顕著に示しているもの

一覧

凡例
  • 2023年12月現在の選定地を示す。
  • 市町村合併に伴い保存地区の名称が改称されたものについては、改称後の名称を表示した。
  • 「重要伝統的建造物群保存地区一覧」の示す指定地区名称は「○○市/町/村△△(町)」であるが、本表では市区町村名の「○○市/町/村」と「△△(町)」の部分を分けて記載する。
  • 種別は上記の「重要伝統的建造物群保存地区一覧」による

重要伝統的建造物群保存地区
都道府県
市区町村
名称
選定年月日
種別
面積(ha
画像
3
港町
14.5
2
武家町
10.6
1
商家町
3.1
2
武家町
34.8
1
商家町
7.4
2
在郷町
10.6
2
武家町
6.9
3
在郷町・醸造町
15.5
3
宿場町
11.3
2
山村集落
13.3
2
在郷町
17.6
2
在郷町
9.6
2
製織町
13.4
3
山村・養蚕集落
63.0
1
商家町
7.8
3
商家町
7.1
3
港町
28.5
1
商家町
5.5
1
鋳物師町
6.4
2
在郷町
4.1
相倉五箇山
3
山村集落
18.0
菅沼(五箇山)
1
山村集落
4.4
1
茶屋町
1.8
1
茶屋町
0.6
2
寺町
22.1
2
寺町
22.0
2
船主集落
20.5
2
船主集落
11.0
3
山村集落
151.8
3
山村・養蚕集落
10.7
1
商家町・茶屋町
19.1
2
宿場町
9.2
3
宿場町
10.8
3
山村・養蚕集落
15.1
3
山村・講中宿
25.6
2
宿坊群・門前町
73.3
3
宿場町
17.6
2
漆工町
12.5
2
商家町
13.0
1
宿場・養蚕町
13.2
3
宿場町
1245.4
3
山村集落
59.7
1
商家町
4.4
1
商家町
6.6
1
商家町
9.3
3
商家町
14.6
3
城下町
14.1
荻町白川郷
3
山村集落
45.6
3
山村集落
19.5
名古屋市緑区
1
染織町
7.3
1
商家町
21.5
3
宿場町
25.0
3
里坊群・門前町
28.7
2
商家町
5.0
1
商家町
13.1
|
農村集落
32.2
京都市北区
|
社家町
2.7
京都市東山区
|
門前町
8.2
京都市東山区
|
茶屋町
1.4
京都市右京区
|
門前町
2.6
|
山村集落
127.5
|
漁村
310.2
|
製織町
12.0
|
寺内町・在郷町
12.9
神戸市中央区
|
港町
9.3
|
城下町
23.1
|
城下町
40.2
|
宿場町・農村集落
25.2
|
山村・養蚕集落
5.8
|
商家町・醸造町
15.9
|
寺内町・在郷町
17.4
|
商家町
7.0
|
商家町
17.0
|
醸造町
6.3
|
商家町
9.2
|
商家町
9.5
|
農村集落
25.8
|
鉱山町
162.7
|
港町・温泉町
36.6
|
武家町・商家町
11.1
|
商家町
15.0
|
商家町
8.1
|
寺町・商家町
12.0
|
鉱山町
6.4
|
宿場町
11.5
|
港町
6.9
|
製塩町
5.0
|
港町
8.6
|
門前町
16.8
|
武家町
55.0
|
武家町
4.0
|
港町
10.3
|
宿場町
20.8
|
商家町
1.7
|
商家町
5.3
|
山村集落
32.3
|
漁村集落
3.7
|
港町
13.1
津島町岩松。}}
|
在郷町
10.6
|
在郷町
4.9
|
製蝋町
3.5
|
在郷町
18.3
|
武家町
9.2
|
商家町
19.8
|
在郷町
18.4
|
在郷町
20.7
|
山村集落
71.2
|
城下町
58.6
|
港町・在郷町
2.0
|
醸造町
6.7
|
商家町
12.8
|
製磁町
15.9
|
港町
7.5
|
港町
17.0
|
港町
21.2
|
武家町
9.8
|
商家町
10.7
|
武家町
16.1
|
武家町
19.8
|
港町
7.2
|
山村集落
39.9
|
武家町
43.8
|
武家町
19.2
|
武家町
18.6
|
武家町
20.0
|
島の農村集落
21.4
|
島の農村集落
38.3

課題

重伝建に選定される地域の道路形態は、自動車交通に対応していないところが多い。これはインフラ整備などによる開発から取り残されたり、元々交通の不便な島嶼や山村であったりしたために、結果的に伝統的な建造物が残ったケースが多いからであるが、重伝建選定時の伝統的建造物と都市計画決定済みの道路との関係や観光客の増加に伴う自動車交通への対応などが課題になることが多い。その他にも、歴史的風致に関わる建造物の外観・外構について増改築に制約が掛かるほか、観光客のマナー問題(騒音やごみ、私有地への無断立ち入りなど)によって、そこで生活する住民にとってマイナス要素となることがある。

その一方で、制約がかかる部分の修理には8割前後の市町村補助が有り、ほとんどが伝統木造建築であることから防災事業が行われることが多い。国は市町村補助・事業の5割(場合によってはそれ以上)を負担する。また、伝統的建造物及びその土地については、相続税と固定資産税に一定の優遇措置がとられる。したがって、伝統的な町並みや建物を活かしたいと考える自治体・住民にとっては、プラス要素が大きい制度である。

参考文献

脚注に使用。主な執筆者の順。

文化材保護法研究会
  • |year=2009}}、、。(第2次改訂版は2006年刊)
    • 「重要文化的景観選定基準(平成17年文部科学省告示第47号)2240頁。
    • 「重要伝統的建造物群保存地区選定基準(昭和50年文部省告示第157号)2240頁。
    • 「選定保存技術の選定並びに保持者及び保存団体の認定の基準」
文化庁
  • |publisher= 文化庁|year=2008}}、。
    • 「重要文化的景観選定基準(平成17年文部科学省告示第47号)」2480頁。
    • 「重要伝統的建造物群保存地区選定基準(昭和50年文部省告示第157号)」2480頁。
    • 「選定保存技術の選定並びに保持者及び保存団体の認定の基準」
  • |year=2008}}、。
    • 「伝統的建造物群保存地区保存計画(作成例)」27頁。
    • 2省令「(4)伝統的建造物群保存地区に関する条例の制定等の場合の報告に関する規則(昭和50年文部省令31号)」196頁。
    • 2省令「(6)重要伝統的建造物群保存地区の選定の申出に関する規則(昭和50年文部省令第32号)」198頁。
    • 告示「○重要伝統的建造物群保存地区選定基準(昭和50年文部省告示第157)」224頁。
  • |year=2015}}、。伝統的建造物群保存地区制度40周年。
    • 「重要伝統的建造物群保存地区一覧」6頁。
    • 「伝建制度の40年(文化庁文化財部参事官伝統的建造物群部門)」11頁。
    • 「II 重要伝統的建造物群保存地区の概要」
      • 「1 函館市元町末広町(港町 北海道)」(18頁)から「109 竹富町竹富島(島の農村集落 沖縄)」(234頁)。
    • 「III 資料編」
      • 「重要伝統的建造物群保存地区一覧(選定順)」245頁。
      • 「重要伝統的建造物群保存地区選定数の推移」249頁。
      • 「文化庁予算の推移(伝統的建造物群)」249頁。
      • 「伝統的建造物群保存地区制度フローチャート」262頁。
      • 「文化財保護法(抄)」263頁。
      • 「文化財保護法施行令(抄)」266頁。
      • 「重要伝統的建造物群保存地区選定基準」267頁。
      • 「伝統的建造物群保存地区の現状変更規制の概要」268頁。
      • 「年表」269頁。
文部省
  • |work=告示}}

脚注

注釈

出典

関連項目

関連資料

脚注に使っていない資料。発行年順。
  • 、。
    • 「第3章 伝統的建造物群の保護」184頁。
    • 「第3編 資料・統計 §3 指定等基準」
      • 「特別史跡名勝天然記念物及び史跡名勝天然記念物指定基準」580(9)
      • 「(10)重要伝統的建造物群保存地区選定基準」581
      • 「(10)重要伝統的建造物群保存地区選定一覧」592
      • 「選定保存技術の選定並びに保持者及び保存団体の認定の基準」581(4)
      • 「10 伝統的建造物群関係資料 §(1)伝統的建造物群保存地区原因別被害棟数」614

外部リンク

  • 重要伝統的建造物群保存地区一覧 - 文化庁

Category:1975年設立

wikipediaより

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