車椅子

車椅子(くるまいす、)とは、身体の機能障害などにより歩行困難となった者の移動に使われる福祉用具。一般的なものはここでいう一般的なものとはJIS規格(規格番号JIS T 9201)で定められている「手動車いす」のことで、車いす型式分類における「自走用標準型車いす」や「介助用標準型車いす」などのこと椅子の両側に自転車に似た車輪が1対、足元にキャスター(自在輪)が1対の、計4輪を備える。車椅子は健常者も使用できる。

筋力などの理由により一般的なものの利用が困難な場合、「電動車いすJIS規格(JIS T 9203)で定められているもの」の利用が検討される。こちらは動力電動モーターを使用したものであるが、いわゆる「セニアカー(シニアカーJIS規格(JIS T 9208)では「ハンドル形電動車いす」と呼ばれる。 」などと呼称されるものとは構造が異なる。そのほかにも、重度な障害者向けにストレッチャーのような形態のものや、各種障害者スポーツに特化したものも存在する。以下、該当項目を参照のこと。

2010年11月30日までは、「椅」(い)が常用漢字外であったこともあり、日本の法令では「椅子」を平仮名車いすと表記した。

使用者として、身体障害者の内でも下肢障害者が想定されるが、脳性まひなどによる不随意運動パーキンソン病などによる振戦により身体の動作がうまくいかない場合や、内部疾患(心臓や呼吸器)による中長距離の歩行が困難な者、加齢による筋力低下、怪我(骨折など)による一時的使用など、幅広く使われている。そのため、普段は使わない人でも、中長距離歩行に不安の有るものが移動の時には使用し、こういった人々の利用に供する為、公共施設や病院には備え付けのものが常備されていたり、自治体などでは貸し出しのシステムが備えられている場合がある。
自治体などで車椅子体験会でも使われることもある。

歴史

椅子車輪という発明が存在した地域から、自然発生的に生まれたと考えられており、その歴史はかなり古い。車輪のついた家具という発明は、記録に残っている限り、紀元前6世紀から5世紀頃、中国の石板に見られる碑文や、ギリシャの花瓶に描かれている乳母車である。障害者を運ぶために使われる車椅子の初期の記録は、3世紀ごろの中国に遡る。当時の車椅子は、重い物を運ぶための手押し車に近いものであり、障害者だけでなく、重い物も運ぶもので、障害者専用として明確に区分けされていたわけではなかった

有名なところでは、障害者ではないが諸葛亮三国志演義の中で、車輪のついた椅子に乗っている描写がある。三国志演義はの時代に書かれており、この時代の中国には、車椅子という発想が存在していたことを示している。

また、1595年に描かれたとされる、スペイン王フェリペ2世の肖像には、召使に押してもらう型(今で言う介助型)に乗っている姿が描かれている。この車椅子を発明した人物の名は不明である。これは、肘掛けや足置きを備えた精巧なものであったが、一方で車輪は小さく、移動にはかなりの労力を要するなど、欠点があった

自走式タイプが初めて考案されたのは、1650年ステファン・ファルファという人物によって(ファーフラーとも。自身が下肢に障害があった模様で、自走といっても今のような後輪を直接回すのではなく、前輪をギヤ駆動のクランクで回す形式であった)。これらは、障害者も利用したが、障害者でない者も利用しており、当時は「車椅子は障害者の乗り物」という現代人の常識とは異なっていたようである。ヨーロッパでは、18世紀のはじめ頃から車椅子が商業的に製造されていたと考えられている車いすのはじまりは? - つくばみらい市 社会福祉協議会車椅子の歴史 海外編 - 株式会社ジェー・シー・アイ日本生活支援工学会誌 Vol.9 No.2 意匠から見る手動車いすの発展、閲覧2017年8月3日

画像:Rollstuhl Koenig Philipp 1595.jpg|フェリペ2世/1595
画像:18 century wheelchair.jpg|18世紀の車椅子
画像:The Boardwalk, Atlantic City, N. J (NYPL b12647398-66712).tiff|20世紀初頭の写真。当時は、富裕層が召使いを使って、車椅子に乗る事もあった。

日本では、中世近世には疾病などで歩行が困難な者が使用する「土車」「いざり車」と呼ばれる車椅子の原型と呼べるものが存在していた。もしくはに四つの車輪(両方とも製)の付いたもので、使用者はあぐらなどで座り、手に持った地面を突いて、もしくは取り付けたや手押し部分で介助者が動かした。これに乗って寺院巡礼などの長期旅行をする者もいて、記録浄瑠璃作品や浮世絵など)が散見され、また実物が各地の寺院に残っている。明治以降では大正初期からアメリカイギリスから輸入された記録がある。また、1920年頃につくられた「廻転自動車」と呼ばれた物が日本国内で最初に開発された西洋式の原型とされている。ただし、これは文献には残っているものの、正確な製造者や製造年は分かっていない。日本で製造したとはっきり認められるのは、同じく1920年頃、北島藤次郎(北島商会(現、株式会社ケイアイ)創設者)により作られたもので、製であった。これらは戦傷で障害を負った軍人入院患者のために、一部の病院で用いられたようである。

第二次世界大戦では、多くの軍人民間人が負傷した。戦後義肢などとともにその需要が急激に高まっていたが、当時はあらゆる物資が不足しており、これらの障害者になかなか行き渡らなかった。1951年に制定された身体障害者福祉法により、徐々に普及が進んだ。

1964年に行われた東京パラリンピック欧米製の優秀さを目の当たりにし、これをきっかけに日本でも性能が急激に上がることとなる車椅子の歴史 日本編 - 株式会社ジェー・シー・アイ

1990年以降、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(通称「バリアフリー法」)などの制定により社会のバリアフリーが推進され、ノーマライゼーションの観点から車いすを用いての利用、移動を考慮して面のフラット化(段差解消)、ゆるやかなスロープ、車いすの幅を考慮した開口部の広いドアなどを設備した施設が増えている。

購入

福祉用具取扱店など専門業者のほか、ホームセンターなどでも販売されている。電動型は障害者個人の特性に合わせ、専門業者からカスタマイズ販売されることが多い。
Amazonでも車椅子販売がある。

価格は手動で1万円前後 - 50万円超、電動では30万円 - 300万円超と幅広い。なお、福祉機器であるため、本体について消費税は課せられない。

主な助成制度としては以下のものがあるが、スポーツなどに特化したものは対象とならない。

非金属製

2010年12月、空港での金属探知機検査を円滑にするために、全体の95%が竹材で出来たものを開発金属探知機に反応しない竹製車椅子を開発 - 産業技術総合研究所、2010年12月21日

法的位置付け

日本の道路交通法では、「身体の障害により歩行が困難な者の移動の用に供するための車椅子」を車両として扱わず、「身体障害者用の車椅子」として位置付けている。ただし、原動機を用いる車椅子(いわゆる電動車椅子)については、内閣府令で定められた基準(後述)を満たしている必要がある。2022年4月の改正で身体障害者補助用のパーソナルモビリティを含めるために「身体障害者用の車」と改められた道路交通法 2022年4月26日改正

身体障害者用の車椅子を通行させている者については、法令上歩行者として扱われる。原動機を用いる車椅子についても、(車椅子が基準を満たしていれば)歩行者として扱われ、運転免許を取得することもなく利用できる。

原動機を用いる車椅子については、以下の基準を満たす車椅子のみが「身体障害者用の車椅子」として扱われる

  1. 車体の大きさが、長さ1.2メートル・幅0.7メートル・ヘッドサポートを除いた部分の高さ1.2メートルを超えないこと。
  2. 次にあげる構造をもっていること。
    1. 原動機として電動機(モーター)を使うこと。すなわち内燃機関(エンジン)を使っていないこと。
    2. 時速6キロメートルを超える速度を出すことができないこと。
    3. 歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がないこと。
    4. 自動車又は原動機付自転車と外観を通じて明確に識別することができること。

但し、使用者の身体の状態を鑑みて車体の大きさを遵守した車椅子が使用できず、やむを得ず大きな車体の車椅子を使用することについて、住所地を管轄する警察署長から確認を受ければ、車体の大きさに関する規定は適用されない。

飲酒・携帯電話を操作しての使用

前述の通り日本国内においては歩行者として扱われるため、飲酒し使用しても携帯電話を操作し使用しても法令違反には問われない。
しかし、機械・乗り物であることから避けるべきであるとの見解が警察庁より示されているhttps://www.taro.org/2018/12/電動車椅子と飲酒.php</ref><ref></ref>。

製造メーカー・輸入代理店

関連する日本産業規格

  • JIS T 9201 『手動車いす』
  • JIS T 9203 『電動車いす』
  • JIS T 9206 『電動車いすの電磁両立性要件及び試験方法』
  • JIS T 9207 『車いす用可搬形スロープ』
  • JIS T 9208 『ハンドル形電動車いす』
  • JIS T 9271 『福祉用具-車椅子用クッション』
  • JIS T 9272 『福祉用具-車椅子用テーブル』

脚注

注釈

出典

関連項目

外部リンク

*

wikipediaより

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