バリアフリーとは、対象者である障害者を含む高齢者等が、社会生活に参加する上で生活の支障となる物理的な障害や、精神的な障壁を取り除くための施策、若しくは具体的に障害を取り除いた事物および状態を指す用語である。
「設備やシステムが、広く障害者や高齢者などに対応可能であること」を指して「バリアフリー」と言うのは、主にアジアやヨーロッパなどの非英語圏で見られる用法で(例えばドイツでは「Barrierefreiheit」と呼ばれる)、アメリカやイギリスなどの英語圏では「アクセシビリティ」(accessibility)と呼ぶ。それに対して、英語圏で「バリアフリー」と言うと、単に建物の段差を取り除くことなどのみを示す。
前出の報告書「バリアフリーデザイン」では、緒言において障壁を「物理的障壁」と「社会的障壁」とに分類しており、社会的な意識の変革が必要だとしている。また、そのような障壁を作り出してしまう原因として「Mr.Average」なる架空の人物を図示し、障壁が生み出される要因は、それらの「実在しない人々」のニーズに応えるように作られているためだと指摘している。Mr.Averageは、肉体的にもっともよく適応できる壮年期にある男性(女性ではない)の象徴であり、「統計的に言えば、少数の人しかこのカテゴリーには属さない」とされ、決して障害者や高齢者のみを対象としているものではないことを明らかにしており、ましてバリアの存在を前提としているとは記していない(同報告書の全文は、日比野正己・編著『図解 バリア・フリー・百科』阪急コミュニケーションズ刊・1999年に掲載されている)。
物理的な解決法を指す言葉として用いられることが多いが、社会生活弱者が容易に社会参加できるように促す概念としての位置付けがある。
当用語は日本と英語圏では意味合いに「差異」が指摘されており、当用語に当たる単語としては英語圏ではアクセシビリティ(accessibility)が一般的とされている。
床面に段差を設けずに行き来できるようにした状態(車椅子使用者をメインにした場合)を表現する場合が多いが、識別が難しいとされる数センチメートル程度の段差を識別しやすくする方法(段差突端部分に明度差や蛍光テープをつけたり、小ランプを埋め込むなど)や敢えて段差を大きくする考え方(視覚障害や杖使用歩行者をメインにした場合)もある。
利用者の場合は、段差には傾斜路(スロープ)の設置で対処する場合が多い。建築基準法施行令の第25条で定める「階段に代わる傾斜路」の勾配は1/8(約7度)以下と規定されている。階段の踊り場のように途中に平らなスペースを設けられており、規定で「高さが75センチメートルを超える傾斜路にあっては、高さ75センチメートル以内ごとに踏み幅(平らな部分の奥行き)150センチメートル以上の踊り場を設けること」となっている。
具体的には、施設面(特に公共施設)では
などを指す。
ファイル:富山LRT.jpg|超低床電車の例(富山市ポートラム)
ファイル:Slope for Wheelchairs in omnibus.jpg|バスに装備された車椅子スロープの例
(神奈川中央交通)
ファイル:Accessible slope in Chion-in.jpg|知恩院に設置された車椅子スロープ
ファイル:Ampm.jpg|スロープ状のコンビニの入口
(ただし一般の乗り上げブロックは道路法では違法)
ファイル:Daiei Marinatown shop002.jpg|ハートビル表示板の例
(福岡県福岡市のイオンマリナタウン店)
ファイル:手すり.jpg|廊下の二段手すりの例
ファイル:多目的トイレ.jpg|多目的トイレのピクトグラムの例
(オストメイト・乳児にも対応)
ファイル:多目的トイレのピクトグラムの例.jpg|多目的トイレのピクトグラムの例
(高齢者・子供連れにも対応)
ファイル:Holder of the walking stick in the toilet.jpg|トイレの杖ホルダー
ファイル:多目的トイレの例.jpg|スペースの広いトイレの例
ファイル:手すり付小便器.jpg|手すり付小便器の例
ファイル:オストメイト対応トイレ1.jpg|オストメイト対応トイレ
(汚物流しシャワー型)
ファイル:オストメイト対応トイレ2.jpg|オストメイト対応トイレ
(パウチしびん洗浄水栓使用型)
ファイル:ベビーチェアーのあるトイレ.jpg|ベビーチェアーのあるトイレのピクトグラムの例
ファイル:ベビーチェアーの例.jpg|ベビーチェアーの例
ファイル:車イス用電話ボックス.jpg|スペースの広い電話ボックスの例
(北海道旭川市の平和通買物公園)
ファイル:車イス用電話ボックス02.jpg|スペースの広い電話ボックスの例
ファイル:身障者用駐車場.jpg|身障者用駐車場における標識の例
ファイル:身障者用駐車場2.jpg|障害者用駐車場の例
ファイル:身障者用駐車場看板の例.jpg|身障者用駐車場における標識の例
(石川県金沢市の金沢市庁舎駐車場)
ファイル:歩道バリアフリー化工事標識.jpg|歩道バリアフリー化工事の標識の例
ファイル:点字ブロック.jpg|点字ブロックの例
ファイル:盲導チャイム.jpg|電子チャイム(盲導鈴)の例
ファイル:音響式信号機.jpg|音響式信号機の例
ファイル:インターホン.jpg|インターホンの例
ファイル:Handicapable vending machine in Japan 2012.jpg|低位置にボタンがある自販機の例
ファイル:Vending-machine.JPG|大きなコイン投入口
ファイル:Platform 4 of Nishikokubunji station.jpg|大きな数字で明確に表示(西国分寺駅)
ファイル:Long-distance Bus Navigation in Japan.jpg|大きな文字と色分け(東京駅のバス乗り場)
都市部における高齢者や身体障害者に配慮したまちづくりの推進を図るため、快適かつ安全な移動を確保するための施設の整備等を行うことを目的とした国土交通省の所轄事業。
市街地における道路空間等と一体となった移動ネットワーク整備に対して、地方公共団体が行う整備計画の策定と、動く通路、スロープ、エレベーターその他の高齢者や身体障害者の快適かつ安全な移動を確保するための施設の整備等に一定の補助が適用される。
当概念を広義に適用したもので、観光立国日本を実現するため、訪日外国人旅行の利便性・満足度向上のため、交通機関の掲示板を、多数の言語で表示しようとする事業である。英語・中国語・朝鮮語での表示が主になっている。ただし、英語圏・中華人民共和国・大韓民国(北朝鮮)において、相互主義で同様の掲示が日本語で示されているわけではない。東日本大震災の復興予算が、被災地以外での言語バリアフリー化に用いられていることが判明し問題となった。