節電

節電(せつでん)は、電気の使用量(消費量)を節約すること。

節電の意義

ひとつは電気料金の低減である。電気料金は電気の使用量に応じて請求されるため、節電することで、節電する人(家庭、法人、組織など)の出費を減らし、容易に実感できる効果をもたらす。

また、地球の環境を守るのに役立つ。例えば近年の日本では火力発電が60%を占めており、それは石油・石炭・天然ガスを燃やしており二酸化炭素を多く排出し『どうして節電しないといけないの? 節電ネット』、地球の温暖化により街や国の水没(ツバルヴェニスの水没など)を引き起こしたり、異常気象を引き起こす、といった大問題を地球全体に対して引き起こしている。節電によってそれらの問題の原因を減らすことができるのである

さらに夏のピーク時、電力供給がひっ迫している時の電力消費を減らすことができれば、結局、危険な原子力発電所を含め、無駄な発電所を減らすこともできる『よくわかる原子力 原子力教育を考える会』節電は原発をなくす。ピーク時の節電により、大規模停電計画停電を回避することもできる。

電力事業者が発電設備への投資を抑える代わりに、大口需要家に対価を払いピーク時の電力消費を抑制してもらうことをネガワット取引という。

節電の方法

ピークカット・ピークシフト

「ピークカット」とは、電力需要のピークにあたる時間帯の電力消費を低くおさえること。また「ピークシフト」とは、夜間など比較的電力需要の少ない時間帯に、電気を使用する時間を移動したり蓄熱すること。

日本の電力需要がピークを迎える時期は7月 - 9月の平日(お盆休みの8月13日 - 16日を除く)9時 - 20時頃であり、中でも13時 - 16時頃が高く、14時頃が最も高くなっている。また何らかの理由によって電力を十分に供給できない場合は、電力会社側から節電の呼びかけが行われる。たとえば、夏場に空調などの使用によりピーク時の消費電力が発電設備の総発電量を超えてしまうおそれがある。このため、電力会社によって夏季の空調設定温度を高めに設定するなどの節電が呼びかけられることが多い。

電力会社は常に電力消費状況を監視しており、電力供給力の限界が近づいていることを感知すると、大口電力需要家と電力会社との間で結ばれる「需給調整契約」に基づき、使用電力の削減を要請することができる。それにも関わらず電力の供給が逼迫したときには強制的に電力供給を停止できることになっている(電気使用制限等規則)。このため各事業者では、要請に備えて電力使用機器の優先順位をあらかじめ決定しておき、要請に応じて機器を停止していく措置をとるようにしている。

また大規模停電を防ぐために計画停電が実施されたり、自治体からエアコンを切るように住民に呼びかけが行われる場合もある。なお電力会社各社で、電力の需給予測や需給状態を掲載する「でんき予報」が、それぞれの公式サイトで発表される場合もある。

日本における電力消費の割合

<家庭・夏14時頃(年間で最も電力消費が多い時)『でんきの情報広場 電気事業連合会』日本の電力消費の山と谷

1.エアコン (53%) 2.冷蔵庫 (23%) 3.テレビ (5%) 3.照明 (5%) 5.待機電力 (4%) 6.温水洗浄便座 (0.8%) 7.パソコン (0.3%) 8.その他 (10%)


東京電力管内の主要産業・施設別電力消費量読売新聞 2011年3月24日
産業・施設
消費電力
kW / 日)
電気・自動車等 46,170,000
化学 24,700,000
鉄鋼 17,530,000
鉄道 17,260,000
360,000
下段東京都交通局都営地下鉄)・東京地下鉄(東京メトロ)の合計
食品 15,300,000
パチンコ 4,150,000
10,920,000
下段はピーク時で換算した場合
飲料販売機 4,000,000
東京ドーム
(1試合)
40,000
45,000
下段は東京ドーム広報発表
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節電の取り組み

企業・官庁でできる節電

  • 空調関連
    • 冷房は設定温度を高めにし、暖房は設定温度を低めにする。
    • 空調室外機周辺への散水や、空調室外機周辺を日陰にする工夫や通気性の確保。なお、空調室外機自体に水を掛ける事は故障のおそれがある。
    • 建物周囲の地面や壁面への散水、打ち水。気化による吸熱や凝結(結露)による発熱(凝縮熱)の活用・抑制という原理を利用している)
    • できるだけ衣服で体感温度を調整する。クールビズウォームビズの取り組み
    • さほど気温が高くない時は、安易にエアコンを作動させるのではなく、可能な場合にはなるべく窓を開けてオフィス内に風を通す。
    • 換気の実施
      • 夜間に機器の熱がオフィスにこもり室温が上がっている場合は、いきなりエアコンを作動させるのではなく、一旦窓を開けて熱い空気を充分に排出してから、窓を閉じエアコンを作動させる。
      • ナイトパージ(夜間等の冷気の取り入れ)の実施
    • 空調効果の向上(断熱性の強化)
      • 出入り口へのドアや二重扉、回転扉の設置
      • 出入り口へのエアーカーテンの設置
    • 代替空調システムの採用
    • より高効率の空調設備への更新
    • 室温の数的な把握
      • 室温計をオフィス等に設置し、室温を実測により把握する。
      • 熱流体解析や建物エネルギーシミュレーションの使用
      • サーモグラフィや熱赤外航空撮影による計測
    • 遮熱塗料や熱吸収塗料や放熱塗料、温度で性質の変わる塗料を活用する
    • 熱源からの熱を室内に拡散させずに直接外気に逃す (ファンによる強制冷却、ヒートパイプラジエーターによるサーモコイルなど)
    • 断熱効果を持つ空気層の削減による冷却ファンの削減 (油冷、液体シリコン冷却など)
    • 顕熱蓄熱や潜熱蓄熱、化学蓄熱の活用
  • 照明関連
    • 照明使用の削減
      • 休憩時間帯に照明を消す。
    • LED灯器への置き換え
      • 信号機LED化(交通信号機鉄道信号機など)
      • 航空灯火(飛行場灯火航空障害灯など)、航路灯火(灯台灯台にもLEDの波/Web東奥・ニュース20121109140523 東奥日報 2012年11月9日航路標識灯など)のLED化
      • トンネル照明のLED化
        • LED照明の直流給電化 - 太陽光発電等から変換せずに給電
      • 街灯やガーデンライトのLED化
      • 集魚灯のLED化
      • 高輝度水銀灯のメタルハライドランプ化やLED化公共施設照明器具JIL5004-2009において、グロー式蛍光灯と水銀灯が廃止となっている。また2021年以降水銀灯が原則製造禁止となる(水俣条約)。
      • 自動車や鉄道車両の灯火のLED化
      • オフィスの内装や家具の色使いを工夫する (オフィス家具、カーペット、壁面 等。できるだけ白を基調とすると室内を光が何度も反射することで行き交い、わずかな照明で明るくなる。黒っぽい家具は光を吸収してしまう。)
        • 拡散反射率の高い内装材(白色で面粗度や光沢度が低いもの)や内装塗料(日本ペイントのアカルクスなど)の使用
      • 塗料への蛍光増白剤の添加 (蛍光ホワイト塗料。紫外線を可視光に変換。紙など)
        • 蓄光塗料(燐光)の活用
      • 膜屋根・トップライト(天窓)・サンルーフの導入により、自然光(太陽光)利用による照明点灯の削減オフィスの他、観光バスや黒部峡谷鉄道2800形など
      • 太陽光追尾採光装置の採用
      • 照明解析(CAE)の使用
  • 送受電関連
    • 電線の太径化
    • 高効率変圧器への更新
    • 力率改善コンデンサーの導入
    • 発電所からの距離を短くする
    • 三相交流の使用
    • 20kV/400V配電方式の採用
  • 通信関連
    • 電話交換機の更新
    • 通信設備の更新
      • 有線通信設備、無線基地局、無線ルーターなど
      • エッジルーターの更新や統廃合、省エネ機器への更新
      • 光通信設備のFTTx等からPON(受動光ネットワーク)によるFTTH等への更新 - 基地局や集合装置が不要となる。
期待節電量
野村総合研究所によると、1軒あたりの期待節電量(W)は以下の通りである家庭における節電対策の推進野村総合研究所2011年4月15日
  • 1.液晶テレビを消す(220W)
  • 2.白熱電球を3つ消す(162W)
  • 3.エアコンを1台止める(130W)
  • 4.白熱電球3つを蛍光灯に交換する(126W)
  • 5.(冷房時)エアコン2台の設定温度を2℃上げる(52W)
  • 6.使用していないテレビ・DVDレコーダー・パソコンのコンセントを抜く(6W。テレビの場合、年間の電気料金削減効果は約100円

節電の影響

節電熱中症の問題

室温管理などの点で節電の方法が適切でないことによって生じる熱中症(節電熱中症)が社会問題化している節電対策について 小田原市。なお病気で塩分や水分を摂取制限されている人や高齢者などは特に注意が必要で、室温28℃、湿度70%を超えたらエアコンを使うことが薦められている『節電の夏、熱中症予防を 朝日新聞2011年7月14日12版』19面2011年以降、真夏日・猛暑日が予想されるときの関連ニュースや熱中症に関するニュースでは今までの「こまめに塩分や水分を取ること」の表現に加えて「冷房を適切に使用する」といった表現も用いられるようになった

また、野村総合研究所によると、エアコン(1台130W)を消したり、設定温度を2℃上げたり(2台で52W削減)するより、テレビ(220W分)を消した方が節電に効果的であるという実験結果が出ている震災復興に向けた緊急対策の推進について 第6回提言 家庭における節電対策の推進 2011年4月15日 野村総合研究所。エアコンの方が消費電力が高いと思われがちだが、それは起動時のみの話で、総合的な観点から見るとテレビの方が消費電力が高い。健康上のことを考えても、節電をするならエアコンよりテレビを消すことが推奨されている。

一方、資源エネルギー庁によると、電力需要が最も多い夏(7-9月)の平日14時頃に、家庭で消費される電力の割合は、エアコンが53%,テレビ5%とされており、エアコンを使わず扇風機を使った時の削減率は50%、エアコンの設定温度を2℃上げて28℃にした時の削減率は10%、エアコンを使用している時に「すだれ」や「よしず」を使った場合の削減率も10%、テレビの画面の輝度を標準から省エネモードにして、使用時間を2/3に減少した時の削減率は2%と考えられている

治安問題

節電志向の高まりで、深夜にエアコンをつけず、窓を開けたまま就寝する事が多くなっているが、この影響から、主にマンションの2階以上の部屋で、女性がわいせつ被害に遭うケースが多発している。深夜は昼間よりも電力需要が少なくなることから、警察当局は、エアコンをつけてでも施錠するよう呼びかけているわいせつ被害:大半がマンション2階以上 無施錠多く 毎日新聞 2012年6月29日

換気設備不使用による事故の問題

ガス機器使用時に節電の目的などを理由に換気扇など換気設備を用いないことは一酸化炭素中毒のおそれがあるためガス会社などではガス機器の使用時には十分な換気を行うよう注意を呼び掛けている節電実施時にガス機器をご使用になる時の換気のお願いについて 東京ガス 2012年7月17日

季節による影響

電化製品の節電をした場合、節電量にもよるが、夏は冷房の負荷も低下する好影響があるが、冬は暖房の負荷が上昇する悪影響がある。なので冬は電化製品の節電以外に断熱を意識した方法が重要と思われる。

具体的事例

原子力発電所点検データ改竄事件

2003年7月・8月
電力系統のトラブルによるものとして2002年に発覚した原子力発電所点検データ改竄事件の影響で原子力発電所の停止点検を余儀なくされた東京電力が大々的に節電の呼びかけを行なった。

東日本大震災に関連する節電

東北地方太平洋沖地震東日本大震災)で東京電力・東北電力傘下の発電所が各地で損傷を受けたため、両社管内の電力需要が逼迫した。また同地震によって引き起こされた福島第一原子力発電所事故の影響により各地の原子力発電所が点検長期化・運転停止となっているため、被災地以外でも電力不足の懸念が生じ、節電が呼びかけられている。

2011年3月・4月
東京電力は大々的に節電呼びかけを行なうとともに「輪番停電」を実施した。
なお東京都知事石原慎太郎は、東日本大震災を受けて経済産業省が産業界に25%の電力削減を求めていることに触れ、パチンコ自動販売機はやめるべきと主張し政令によって節電させるよう日本政府に要望している。また、飲料自動販売機とパチンコの合計消費電力は福島第一原子力発電所1号機の2基分に相当するとの指摘もなされている東電管内の自販機・パチンコ 消費電力は原発2基分 東京新聞 2011年4月19日
2011年6月 - 9月
経済産業省では東京電力・東北電力管内全域で、原則2011年7月 - 9月の平日9時 - 20時における使用最大電力を15%削減するよう協力を呼びかけている。さらに大口需要家に対しては、電気事業法第27条に基づく使用制限(電気使用制限等規則)を実施することになった『電気事業法第27条による電気の使用制限の発動について 経済産業省』。期間は東京電力管内が2011年7月1日 - 9月22日の平日9時 - 20時、東北電力管内が2011年7月1日 - 9月9日の平日9時 - 20時となっている。なお経済産業省では、具体的な節電方法と削減率をウェブサイトに掲載している『節電 経済産業省』
また関西電力では、2011年7月1日 - 9月22日(8月12日 - 8月16日は除く)の平日9時 - 20時の間15%程度の節電を呼びかけている『関電、15%節電要請 来月1日〜9月22日 京都新聞』。なお関西広域連合では2011年6月22日 - 9月23日まで5% - 10%の節電を呼びかけており『関西広域連合が節電の呼びかけ NHK NEWS WEB』、電力需要が逼迫した時には10%以上の節電を呼びかける方針『関西広域連合:電力需給逼迫時は追加節電に協力 毎日jp』や、停電の恐れがある時にはエアコンを切るように呼びかける方針『関西広域連合 原発安全協定要請へ NHK NEWS WEB』を打ち出している。
また中部電力北陸電力四国電力九州電力でも、2011年夏のピーク時の電力に余裕が少ない状態になる可能性が予測されており『電力7社で供給難 朝日新聞2011年6月9日13版』3面、各社のウェブサイトで節電の呼びかけを行っている。
なお電力会社各社で、電力の需給予測や需給状態を掲載する「でんき予報」が、それぞれのウェブサイトで発表されている場合もある。また経済産業省は2011年7月19日から、政府が「電力需給ひっ迫警報」を発出した際に携帯電話・スマートフォンへ、メールなどで知らせるサービスを開始した

福島県沖地震に関連する節電

2022年3月16日に発生した福島県沖地震により、一部の火力発電所が停止したことなどの影響によって電力供給が厳しくなったことに加え、南岸低気圧の通過によって関東地方の広い範囲で低温、降雪が予想され需要増加が見込まれたことから、3月21日に経済産業省は翌22日の東京電力管内を対象に電力需給ひっ迫警報を初めて発令した。東京電力は22日の節電が計画通り進んでいないため、夕方以降に一部の地域で停電となるおそれがあると発表。東京都知事・小池百合子は都民に対して節電への協力を呼びかけた国土交通省経済産業省から節電への協力要請を受け、鉄道各社に節電を依頼した

また、東北電力管内にも上記と同様の理由で22日昼頃に電力需給ひっ迫警報が発令された。午前9時台の電力使用率が100%を超え、電力不足の懸念があるためという

東北電力管内では安定供給できる見通しがたったとして22日夜に警報を解除した。東京電力管内は23日午前中の低温予想などを理由に警報が継続されていたが、23日11:00をもってすべて解除された

大韓民国の節電

2013年8月、大韓民国は節電規制に従わない企業の実名を公表、官公庁に「冷房禁止令」などをした

ギャラリー


ファイル:2011 Japanese power saving poster 02.jpg|2011年
ファイル:2011 Japanese power saving poster 03.jpg|2011年
ファイル:2011 Japanese power saving poster 04.jpg|2011年

脚注

注釈


出典

関連項目

  • 節電器 - 日本では2000年代(00年代)に流行するが全く効果が無かった。

外部リンク

節電

省エネ

でんき予報

Category:電力流通

wikipediaより

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