化石燃料

化石燃料(かせきねんりょう、)は、地質時代にかけて堆積した植物などの死骸が地中に堆積し、長い年月をかけて地圧・地熱などにより変成されてできた、化石となった有機物のうち、人間の経済活動で燃料として用いられる(または今後用いられることが検討されている)ものの総称である。

概要

現在使われている主なものに、石炭石油天然ガスなどがある。また近年はメタンハイドレートや、シェールガスなどの利用も検討され始めている。
上記はいずれも、かつて生物が自らの体内に蓄えた昔の炭素化合物・窒素酸化物硫黄酸化物太陽エネルギーなどを現代人が取り出して使っていると考えることができる。

これらの燃料は燃やすと二酸化炭素 (CO2) 、窒素酸化物 (NOx) 、硫黄酸化物 (SO2) などを発生するが、これらが大気中に排出されることにより、地球温暖化や、大気汚染による酸性雨呼吸器疾患など深刻な環境問題を引き起こす要因になっている。また、資源埋蔵量にも限りがあるため持続性からも問題視されている。

これらの環境問題が発生しにくい太陽光発電風力発電地熱発電バイオ燃料バイオマス)などの再生可能エネルギー新エネルギーの研究が進められて、主に西欧諸国やブラジルなどで使われはじめている。

経緯

「化石燃料」の形成

地球温暖化を考える、宇沢弘文、岩波新書、ISBN 4-00-430403-2。
空海とアインシュタイン、広瀬立成、PHP新書、ISBN 4-569-64782-0、p.157-「二十世紀のあやまち」。
40億年強前の大気は主に窒素蒸気・二酸化炭素硫黄酸化物火山ガス)などで形成されていたと考えられている。その中でも二酸化炭素については、当時は今より遙かに高濃度であったと推定されている(後に大気中の概ね 0.03% 程度まで低下、現在は概ね 0.04% になっている)。

生命の起源はおよそ40億年前であると考えられている「生命の起源はどこまでわかったか 深海と宇宙から迫る」p46-47 高井研編 岩波書店 2018年3月15日第1刷発行。当初の生命は嫌気性生物が中心であったが、27億年前に光合成能力を持つシアノバクテリアが誕生し、繁栄していくことで地球環境が大きく変化した。シアノバクテリアは光合成によって太陽エネルギーを利用して大気中の二酸化炭素を吸収・分解、そのうち炭素成分を体内に吸収し、酸素を排出する。シアノバクテリアが放出する酸素の増大に従い、まず大気圏内の二酸化炭素やメタンが消費され、温室効果が消失して24億年前にはヒューロニアン氷期とよばれる最初の全球凍結期に突入した。22億年前にこの氷期は終結するが、この時期には海中でも鉄の酸化が活発となり、縞状鉄鉱床がさかんに生成された。19億年前にこの酸化も終わると大気中の酸素分圧が目立って増加し、窒素と酸素からなる現在の地球の大気となっていった。これにより嫌気性生物は海中深くなど特殊な環境を除いて大量に絶滅し、かわって酸素を必要とする生物が主流となった。この変化は生物の複雑化につながり、19億年前には真核生物が登場し「基礎地球科学 第2版」p145 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷、やがて多細胞生物が現われた。酸素濃度は約8億年前には現代とほぼ同程度(約23%)になり、紫外線から生物を守るオゾン層の上空への移動と拡大をもたらし、生物の陸上への進出と発展をもたらした「人間のための一般生物学」p26 武村政春 裳華房 2010年3月10日第3版第1刷

陸上に進出した樹木などの生物の死骸は堆積・加圧等され、石炭が形成された。特に古生代後半の石炭紀には陸上に大量の大型シダ植物が生い茂り、それが化石化することで大量の石炭が形成され「基礎地球科学 第2版」p150 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷、時代区分の名にまでなった。次いで、中生代末期の白亜紀には温暖な気候により海洋の生物量が増大し、同様の経過をたどって石油が形成された「基礎地球科学 第2版」p153 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷。ただしその後も石炭や石油の形成は続いており、石炭は第三紀までは盛んに生成された「トコトンやさしいエネルギーの本 第2版」(今日からモノ知りシリーズ)p54 山﨑耕造 日刊工業新聞社 2016年4月25日第2版第1刷。日本に埋蔵されている石油も古第三紀に生み出されたものが主であり、石油はさらに新しく新第三紀の生成が主である「基礎地球科学 第2版」p182 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷。言い換えれば、かつて大気中に存在していた炭酸ガスその他の人体にとって有害な成分と太陽エネルギーが、生物の働きによって長大な時間をかけて固定され、地中深くに封じ込められたものであると言える「生命の意味 進化生態から見た教養の生物学」p33 桑村哲生 裳華房 2008年3月20日第8版発行

なお、現在でも大気中の二酸化炭素を有機化合物へと固定する合理的な方法は開発されておらず、人間を含めた全ての動物は、植物による光合成なくしては生命をつなぐことができないが、それは食糧ばかりでなくエネルギーでも、また地球上の様々な循環の仕組みを維持する上でも同様である。

産業革命

化石燃料は世界各地で古くから知られており、一部では使用もされていたが、一般的な燃料としては木やそれから作られる炭などが主であった。しかし、イギリスにおいては16世紀後半ごろから、森林破壊によって燃料となる木材が不足し、その代替として比較的浅い場所に豊富に埋蔵されていた石炭が使用され始めた。当時は一般家庭の燃料のほかガラス製造などにも使用されたが、製鉄への使用は1709年のコークス使用による製鉄の成功を待たねばならなかった「火と人間」p72 磯田浩 法政大学出版局 2004年4月20日初版第1刷。イギリス国内における石炭の産出は18世紀を通じて激増していき、18世紀後半にジェームズ・ワット蒸気機関の改良を行うと、さらに拍車がかかるようになった『ジョージ王朝時代のイギリス』 ジョルジュ・ミノワ著 手塚リリ子・手塚喬介訳 白水社文庫クセジュ 2004年10月10日発行 p.79

ワットの蒸気機関は従来の動力源にくらべ非常に強力なものであり、さらに小型化が可能で比較的可搬性が高かったことから、それ以前の動力の基本であったや人力、水車風車などにかわって主な動力源となっていった。蒸気機関が稼働するためには大量の燃料を燃やして蒸気を絶えず供給する必要があり、そのため石炭の需要は大きく増大した。さらに蒸気機関の普及は世界各国における産業革命をもたらし、世界中で石炭が大量に使用される時代が幕を開けた。

しかし、石炭は安かったものの燃焼効率に優れず、常温固体であるため輸送機器用の燃料としては使いにくく、また目に見えて黒い煤煙を吐くことも問題視され「トコトンやさしいエネルギーの本 第2版」(今日からモノ知りシリーズ)p52 山﨑耕造 日刊工業新聞社 2016年4月25日第2版第1刷、先進国を中心に次第に需要が薄れてゆくこととなった。しかしながら単価の安さや各地に埋蔵されていることなどもあり、今なおアメリカ合衆国中国日本途上国を中心に、発電所高炉などで使われている。

19世紀後半以降、石炭にかわって石油が使われはじめる。それまでも東欧などで比較的浅く埋蔵されていた石油が地域住民により灯油として使われていたが、後に機械掘りやボーリングの技術が開発され、これが普及すると各地で地中深くから石油を掘り出す油井が造られ、大量生産されるようになると価格も下がり、また燃料として使われる成分は常温液体のため(気化しやすい成分については圧縮すると液化し LPG として使われる)使い勝手が良いことなどもあって、特に輸送機器発電、従来は木炭などが主に使われていた暖房・給湯など、様々な用途の燃料として大量消費されるようになった。石油は世界を動かすまさしく根幹となり、石油を産出する産油国は経済的に大きな力を持つようになった。1973年には第四次中東戦争が勃発するが、このときアラブ石油輸出国機構が石油戦略を行い原油価格を大きく引き上げたことで世界経済が大混乱に陥ったいわゆるオイルショックは、このことを端的に示している「トコトンやさしいエネルギーの本 第2版」(今日からモノ知りシリーズ)p60 山﨑耕造 日刊工業新聞社 2016年4月25日第2版第1刷

しかし、石油資源は中東地域への偏在が大きいため、オイルショック以降は世界各地に存在する天然ガスも燃料として盛んに使用されるようになった「トコトンやさしいエネルギーの本 第2版」(今日からモノ知りシリーズ)p62 山﨑耕造 日刊工業新聞社 2016年4月25日第2版第1刷。1990年頃よりシェールガスシェールオイルの開発が始まった。21世紀に入ると、新たな燃料として海底に存在するメタンハイドレートの研究が盛んとなったが、採取の難しさや温室効果が高いことなどから実用化はなされていない「トコトンやさしいエネルギーの本 第2版」(今日からモノ知りシリーズ)p66 山﨑耕造 日刊工業新聞社 2016年4月25日第2版第1刷

生産と利用・埋蔵量

2016年時点で、世界のエネルギー消費量のうち、石油が33%、石炭が28%、天然ガスが24%を占め、総計で約85%が化石燃料によって賄われている「エネルギーの未来 脱・炭素エネルギーに向けて」p7 馬奈木俊介編著 中央経済社 2019年3月10日第1版第1刷発行

石油生産量は需要増に伴って増加傾向にあり、2016年には日量9215万バレルとなっているhttps://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018html/2-2-2.html  「平成29年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2018) HTML版 第2部 エネルギー動向 / 第2章 国際エネルギー動向 / 第2節 一次エネルギーの動向」日本国経済産業省資源エネルギー庁 2020年5月9日閲覧。2018年時点で石油生産が最も多い国家はアメリカ合衆国であり、次いでサウジアラビアロシアの順となり、この3ヶ国が日量1000万バレルを超えている。4位のカナダが520万バレルで、5位以下は500万バレルを下回っており、上位3ヶ国の生産がやや突出している。なお5位以下は、イランイラクアラブ首長国連邦中華人民共和国クウェートブラジルの順となっているhttps://www.mofa.go.jp/mofaj/kids/ranking/crude_much.html 「1日あたりの原油の生産量の多い国」日本国外務省 2020年5月9日閲覧</ref>。かつては長らくロシアとサウジアラビアが石油生産量トップの座を争っていたが、シェールオイル開発の発展に伴い2010年代に入るとアメリカの生産量が急伸し、2018年に世界最大の産油国となった<ref>https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42961830X20C19A3000000/ 「米原油生産、45年ぶり世界首位 シェール増産効果」日本経済新聞 2019/3/27 2020年5月9日閲覧</ref>。天然ガス生産は2016年に約3.6兆m3となっている<ref>https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018html/2-2-2.html  「平成29年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2018) HTML版 第2部 エネルギー動向 / 第2章 国際エネルギー動向 / 第2節 一次エネルギーの動向」日本国経済産業省資源エネルギー庁 2020年5月9日閲覧。生産国としてはアメリカがトップで、ロシアの生産量も大きく、この2ヶ国が突出している。石炭生産量は2016年度には約73億トンであり、そのうち中華人民共和国が32億トンと40%以上を占めており、2位のアメリカの約7億トンの4倍以上となっている。なお、3位以下はインドオーストラリアインドネシア、ロシア、南アフリカポーランドカザフスタンコロンビアの順となっているhttps://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shigen_nenryo/pdf/024_s03_02.pdf 「石炭マーケット研究会報告書(参考資料)」経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部 石炭課 平成30年4月 2020年5月9日閲覧

部門別に見ると、石油消費は運輸部門で圧倒的に大きく、同部門の総エネルギー消費の90%以上は石油によってまかなわれている「エネルギーの未来 脱・炭素エネルギーに向けて」p33 馬奈木俊介編著 中央経済社 2019年3月10日第1版第1刷発行。これは、自動車や飛行機、船舶などの燃料が石油によってほぼ占められていることによる。電気やエタノールなどによる代替燃料開発も進められているものの石油に取って代わることは困難であり、2040年度予測でもこの状況にそれほどの変化はないと考えられている「エネルギーの未来 脱・炭素エネルギーに向けて」p8 馬奈木俊介編著 中央経済社 2019年3月10日第1版第1刷発行。同じく石油が代替困難なもう一つの分野は石油化学工業部門であり、やはり同様に2040年度においても大半は石油を使用したままだと考えられている「エネルギーの未来 脱・炭素エネルギーに向けて」p8 馬奈木俊介編著 中央経済社 2019年3月10日第1版第1刷発行。天然ガスは産業部門と発電部門で主に用いられるが、需要の伸びは2010年代に入り減速している「エネルギーの未来 脱・炭素エネルギーに向けて」p9-10 馬奈木俊介編著 中央経済社 2019年3月10日第1版第1刷発行。石炭使用は2000年代に入り急伸したが、二酸化炭素排出が大きく環境への負荷が大きいことから先進国を中心に代替が進み、発展途上国での使用が中心になるとみられている「エネルギーの未来 脱・炭素エネルギーに向けて」p11-12 馬奈木俊介編著 中央経済社 2019年3月10日第1版第1刷発行。石炭は発電部門のほぼ50%を占めているほか、産業部門でも熱の供給や鉄鋼製造などにおいて広く使用されている「エネルギーの未来 脱・炭素エネルギーに向けて」p33-35 馬奈木俊介編著 中央経済社 2019年3月10日第1版第1刷発行

化石燃料は有限であり、さらに世界経済の成長に伴って消費量が急増を続けていることから、1970年代より化石燃料の枯渇は問題として長く叫ばれ続けている。一方、探査の進展や採掘技術の進歩などによって可採埋蔵量は増加し続けており、そのため可採年数はほぼ変化していない「トコトンやさしいエネルギーの本 第2版」(今日からモノ知りシリーズ)p52 山﨑耕造 日刊工業新聞社 2016年4月25日第2版第1刷。2016年時点で、石油の可採年数は50.6年、天然ガスの可採年数は52.5年、石炭は153年となっているhttps://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018html/2-2-2.html  「平成29年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2018) HTML版 第2部 エネルギー動向 / 第2章 国際エネルギー動向 / 第2節 一次エネルギーの動向」日本国経済産業省資源エネルギー庁 2020年5月9日閲覧

化石燃料の使用が引き起こす公害・環境問題

化石燃料を使用する際、エネルギーを取り出した後に残る二酸化炭素 (CO2)や、不純物として含まれる窒素酸化物 (NOx)・硫黄酸化物 (SOx) などが、いずれも気体粒子状物質として排出されるが、それらが大気中に放出されることにより、次のような様々な環境問題を引き起こす要因となっている。

酸性雨

地球環境報告、石弘之、岩波新書、1988年、ISBN 4-00-430033-9、p.213-。
自然環境科学3(神戸大学発達科学部 田中研究室)
1940年代の北欧では、窒素肥料を施さずとも作物の育ちがよくなる現象が見られるようになった。当初は農家も「天の恵み」だと喜んでいたようだが、じきに湖や川から魚が姿を消し、千年雨に打たれても平気であった遺跡の石塀や、教会のブロンズ像などがボロボロになっていったという。

これらの現象が調査されるうち、水の変質に原因を見ることとなった。当地域では、通常よりも遙かに酸性度の高い、pH 4~5 もの酸性雨が降っていたことが明らかになったのである。スウェーデンの土壌科学者 S・オーデン (Svante Odén) 博士がその影響を広範囲に調べたところ、大気中の亜硫酸ガス窒素酸化物硫酸硝酸に変化し、それが溶け込んで強酸性の雨やが降ったことを突きとめ、1967年に発表した。その変化の過程は極めて複雑かつ多岐にわたるものと想定されており、その詳細な過程は今なお明らかになっていない。

現在では、一般に pH 5.6 以下で酸性雨と定義されている「トコトンやさしいエネルギーの本 第2版」(今日からモノ知りシリーズ)p44 山﨑耕造 日刊工業新聞社 2016年4月25日第2版第1刷が、たとえば日本では東京など南関東の自動車交通過密地帯で排出される自動車排気ガスからの窒素酸化物・硫黄酸化物が丹沢山地奥多摩に酸性雨を降らせて樹木立ち枯れを進めていると考えられており、森林破壊土壌汚染の一因になっている。

呼吸器疾患

化石燃料に含まれる硫黄酸化物および窒素酸化物残渣である粒子状物質は、気管支喘息の最たる原因物質と考えられており、工業地帯からの排煙が四日市ぜんそくをはじめ各地で深刻な公害を引き起こすこととなった。これは水俣病など他の公害と同様、排出者が因果関係を認めなかったことや経済発展を優先する政策の煽りを受けて、公害認定まで数年間を要することとなり、四日市市では被害者に対し独自に医療費補填を実施するなどの対策を行うこととなったが、ようやく国が動きだした頃には自治体が対応しきれない程の被害者数になっていた。

その反省を受けて大気汚染防止法が施行され、工場排煙については脱硫装置の設置が義務づけられるなどの対策が進んだことにより、日本国内の工場排煙に限っては新たな被害が発生しなくなっているが、開発途上国などではそのような規制が整備されていない地域も多くあり、同じ問題が各地で繰り返されている。

一方、内燃機関自動車(ICEV)の燃料として使われ続けているガソリン軽油などについては、費用がかかるという理由で脱硫が完全に行われない状況が今なお続いている。
かつて京浜工業地帯からの排煙により深刻な喘息公害に見舞われた川崎市では、以前は臨海部(公害病第一種指定地域、昭和63年度に解除)で喘息被害者が多かったものの、近頃では北部地域で「小児ぜん息医療費支給制度」適用者が急増するという現象が見られるようになった議会かわさき第57号「ぜん息患者に対する医療費助成等に関する意見書」、2004年 2月。また、その分布が主要幹線道路周辺に多いことも判明する。これは、かつては工場からの排気が主因であった喘息公害の原因が、現在はICEVからの排気ガスに替わっていることを示している。かつての四日市喘息の時などと同様、「証明されていない」という理由で国や産業界では具体的な対策が取られない状況が続いているが、事態のますますの悪化を受けて市では喘息医療費の助成制度の対象地域を市内全域に拡大し、小児ばかりでなく成人も対象にするなどの対策に追われることとなった。川崎市では地勢的に通過交通が多いなどの要因はあるものの、もちろん大気汚染の問題は当市に限って起きている問題ではなく、全国の都市部で深刻な問題になっており、日本だけでも気管支喘息による死亡者が年間3千人を超え、200万人以上が苦しめられている。
ICEVなどにより引き起こされた新たな外部不経済が一般住民の健康や税金を蝕んでいる。

地球温暖化

化石燃料を使う工場や火力発電所などからの排煙、内燃機関自動車(ICEV)や航空機など輸送用機器の排気中には必ず二酸化炭素が含まれるが、硫黄酸化物などより取り除くことが難しく、また硫黄は抽出すれば売却できるが二酸化炭素は売れないという事情もあって、工場などにも除去義務は課されておらず、ほとんどが除去されずに大気中に放出されている。

二酸化炭素は現在の濃度であれば人体に直接害をなすものではないが(二酸化炭素を参照)、大気中に留まると温室効果ガスとして働き、太陽からもたらされるエネルギーを宇宙へ放出する循環経路に支障を来たす。1800年頃までは大気中の二酸化炭素濃度にほとんど変化がなかったものの、その後は増加傾向にあり、しかも加速度的に増加の度を深めている。これは経済成長や産業の発展による化石燃料の増加と軌を一にしている「基礎地球科学 第2版」p205-206 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷。この結果、20世紀中に気温を 1.7上昇させ地球温暖化問題の一因となっている石油の終焉~生活が変わる、社会が変わる、国際関係が変わる~、ポール・ロバーツ・著、久保恵美子・訳、光文社、ISBN 4-334-96181-9。
太古の昔に原始生物が長時間かけて固定し地中深くへ閉じ込められた二酸化炭素を、現代人が100年あまりのうちに大気中に戻してしまったため、気温上昇幅もさることながら、急激すぎる変化の影響は想定することすら出来ていない空海とアインシュタイン p.166-「進む温暖化」より。氷河期末期の気温上昇期には 1.7℃上昇するのに約5千年かかったところが、20世紀の 100年間で上昇したことを指摘している。

二酸化炭素の回収・固定は技術的に困難なため、設備や運用方法の改善や効率化、エネルギー消費量の抑制などで対策が迫られている。

拡散性・非帰属性

化石燃料の消費によって起こる大気汚染には、発生者・地域と被害者・地域が一致しないという問題もある。大気地球全体でつながっているため汚染は広範に拡がり、しかも地形や気流などにより特定の地域に被害が集中しやすい。

たとえば前述の北欧での酸性雨も、工業地帯から遠く離れた農村部でまず被害が起こった。
また喘息公害でも、たとえばICEVを使わない選択をしたとしても被害を免れることができない上、喘息の苦しさは目に見えるものではないため、ICEVに乗っている者には被害者の痛みが伝わらず被害実態が理解されにくいという矛盾が、事態の悪化が放置される一因となっている。

地球温暖化については、二酸化炭素の排出量は中緯度地域に偏重しているが(右グラフを参照)、真っ先に影響を受け深刻な事態が起こるのは、北極南極などの極地や太平洋諸島などほとんど二酸化炭素を排出していない(つまり化石燃料の消費による利益を得ていない)地域と想定されている。このほか、低地の多いオランダ北極圏に位置する北欧諸国などでも大きな影響が想定されている。また政治的にも危機意識が共有されにくいという問題もある。

近年になりようやく問題を把握することのできた国際社会では、その影響の拡大を食い止め抑制するために1992年に気候変動枠組条約を締結、さらに1997年の京都議定書により化石燃料から出る廃棄物など温室効果ガスの排出量削減を約束することとなった「基礎地球科学 第2版」p206 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷。西欧諸国ではその目標に向けて行動しているものの、自国の経済発展が最優先と考える者たちのため、依然として対策が進まない実情がある。2015年にはパリ協定 (気候変動)が採択され、2016年には発効したことで、温室効果ガスの削減努力はさらに強化されたhttps://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h30/html/hj18010101.html#n1_1_1 「平成30年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況 第1部 第1章 第五次環境基本計画に至る持続可能な社会への潮流 第1節 持続可能な社会に向けたパラダイムシフト」日本国環境省 2020年5月9日閲覧</ref>。

資源の偏在と価格変動

化石燃料、特に石油のもう一つの問題点としては、地域的偏在が著しく価格の不安定性が高いことが挙げられる。原油の埋蔵は中東地域に偏在しており、2016年末時点では世界の確認埋蔵量の47.9%が中東地域となっているhttps://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018html/2-2-2.html  「平成29年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2018) HTML版 第2部 エネルギー動向 / 第2章 国際エネルギー動向 / 第2節 一次エネルギーの動向」日本国経済産業省資源エネルギー庁 2020年5月8日閲覧。同様に産出量も2016年度で34.5%を中東地域が占めhttps://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018html/2-2-2.html  「平成29年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2018) HTML版 第2部 エネルギー動向 / 第2章 国際エネルギー動向 / 第2節 一次エネルギーの動向」日本国経済産業省資源エネルギー庁 2020年5月8日閲覧、この地域が原油価格の鍵を握っている。しかし同地域は政治的に不安定であり、中東で政治不安や動乱が起こるたびに原油価格は高騰を見せてきた「トコトンやさしいエネルギーの本 第2版」(今日からモノ知りシリーズ)p60 山﨑耕造 日刊工業新聞社 2016年4月25日第2版第1刷

原油価格は1970年代から80年代初頭にかけての2度のオイルショックによって暴騰したのち急落し、1990年代までは1バレル20ドル台から30ドル台となっていたものの、2000年代に入ると高騰を続け、2008年には1バレル145ドルに達した。同年のリーマンショックによっていったん30ドル台にまで暴落したもののすぐに回復し、2011年には再び100ドルを超え、2014年まで高値安定の状態が続いたものの、生産過剰と産出調整の失敗によって2016年には大暴落し、一時20ドル台にまで落ち込んだhttps://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2016html/1-1-1.html 「平成27年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2016) HTML版 第1部 エネルギーを巡る状況と主な対策 / 第1章 原油安時代におけるエネルギー安全保障への寄与 / 第1節 足下の原油価格下落の要因分析と今後の展望」日本国経済産業省資源エネルギー庁 2020年5月9日閲覧。その後はやや回復傾向を見せたものの、2020年の新型コロナウイルスの蔓延による世界経済の大減速によって原油価格は再び暴落し、同年5月にはニューヨーク・マーカンタイル取引所 (NYMEX)のWTI先物原油価格において、史上初めてマイナス価格を記録した。これはこの取引の特殊性によるもので、イギリスのブレント原油価格は同日26ドル程度となっていたものの、暴落傾向は全世界的なものとなっていたhttps://www.bbc.com/japanese/52351592 「NY原油価格、史上初のマイナス 新型ウイルスで供給過剰」BBC 2020年04月21日 2020年5月9日閲覧</ref>。このように、原油価格は変動が激しく、世界経済の不安要因の一つとなっている。

天然ガス埋蔵量も中東が42.5%を占めるものの、生産は開発の進んでいるヨーロッパや北米が中心となっておりhttps://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018html/2-2-2.html  「平成29年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2018) HTML版 第2部 エネルギー動向 / 第2章 国際エネルギー動向 / 第2節 一次エネルギーの動向」日本国経済産業省資源エネルギー庁 2020年5月8日閲覧、不安定性はやや低い。また石炭は全世界的に広く分布しており、資源供給の安定性そのものは化石燃料のうちで最も高い「トコトンやさしいエネルギーの本 第2版」(今日からモノ知りシリーズ)p54 山﨑耕造 日刊工業新聞社 2016年4月25日第2版第1刷

また、化石燃料は偏在が激しいため、資源に恵まれない国は輸入に頼る部分が大きくなる。日本は特にこの傾向が強く、2011年の東日本大震災とその後の政策によって原子力発電所の操業が大幅に縮小するとその傾向はさらに強まった。2015年時点で日本のエネルギー供給のうち化石燃料に頼る部分は93.6%にも達しているhttps://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018html/2-1-1.html  「平成29年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2018) HTML版 第2部 エネルギー動向 / 第1章 国内エネルギー動向 / 第1節 エネルギー需給の概要」日本国経済産業省資源エネルギー庁 2020年5月8日閲覧。日本のエネルギー自給率は2016年でわずか8.3%にすぎないためhttps://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018html/2-1-1.html  「平成29年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2018) HTML版 第2部 エネルギー動向 / 第1章 国内エネルギー動向 / 第1節 エネルギー需給の概要」日本国経済産業省資源エネルギー庁 2020年5月8日閲覧、日本のエネルギー供給のほとんどは輸入に頼っていることとなる。さらに日本の原油輸入は中東地域が90%近くを占め、同地域の動乱の影響を非常に強く受けやすくなっているhttps://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018html/2-1-3.html  「平成29年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2018) HTML版  第2部 エネルギー動向 / 第1章 国内エネルギー動向 / 第3節 一次エネルギーの動向」日本国経済産業省資源エネルギー庁 2020年5月8日閲覧。このため、エネルギー自給率を高めるとともに化石燃料の輸入先を多元化し安定性を高めることが急務とされている。

化石燃料価格高騰、電気料金値上げ、給油所減少によって生じる問題

20世紀後半以降、日本国内においては大都市部への人口や企業活動の一極集中化が進み、都市部の暖房については即効性、安全性、使用しても黒煙や灰を出さない等の利点もあって、電気式ヒーターや灯油などの化石燃料式ヒーターが好まれ、著しく依存している現状(2013年)となっている。しかしながら2000年代以降は原油をはじめとした化石燃料の価格高騰に拍車がかかってきており、貧困世帯の増加や給油所数の減少も相まって、灯油式ストーブが身近で安価な生命維持装置では無くなりつつある。そのような事情から地方においては再生可能燃料式(主として木質燃料式)のストーブなどの熱を発生させる装置が見直されつつある。冬季に主暖房を灯油などの化石燃料に大きく依存することで生じるリスクについては、こと冷え込みが厳しい地域においては燃料の残量など多角的な状況を把握した上で、生命維持に直結する問題であるため重々警戒する必要がある。

脚注

関連項目

外部リンク

*

wikipediaより

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