コミュニティバス

コミュニティバス(community bus)とは、地域住民の移動手段を確保するために地方自治体等が運行するバスである「都心の交通過疎地を救え・23区にコミュニティーバス続々・採算合わず慎重な区も 」日本経済新聞 2012年7月13日 東京・首都圏経済面狭隘路など交通空白地帯の解消のため、また交通事業者が赤字路線から撤退した後、高齢者障害者学生児童など交通弱者の交通手段が失われないよう、市区町村等が費用を負担してバスを委託運行することが多い『新・ユニバーサルデザイン―ユーザビリティ・アクセシビリティ中心・ものづくりマニュアル』ユニバーサルデザイン研究会、2005年、121頁

「コミュニティバス」は法的に明確に定義されている概念ではない。法的には一般路線バス(乗合バス)と同様、道路運送法などの規定に従う。国土交通省の「コミュニティバスの導入に関するガイドライン」では、「本ガイドラインで『コミュニティバス』とは、交通空白地域・不便地域の解消等を図るため、市町村等が主体的に計画し、以下の方法により運行するものをいう」として「(1)一般乗合旅客自動車運送事業者に委託して運送を行う乗合バス(乗車定員11人未満の車両を用いる乗合タクシーを含む。)(2)市町村自らが自家用有償旅客運送者の登録を受けて行う市町村運営有償運送」と定義しているコミュニティバスの導入に関するガイドライン 国土交通省 (PDF)

なお、公共交通機関を利用できない高齢者や障害者の移動手段を確保する施策としては、日本で採用されているコミュニティバスのほかに、米国などで採用されている個別移送サービスであるや『新・ユニバーサルデザイン―ユーザビリティ・アクセシビリティ中心・ものづくりマニュアル』ユニバーサルデザイン研究会、2005年、118頁スウェーデンなどで採用されているタクシー車両などを利用する予約制のフレックスルートバスなどもある『新・ユニバーサルデザイン―ユーザビリティ・アクセシビリティ中心・ものづくりマニュアル』ユニバーサルデザイン研究会、2005年、115頁。本稿では日本におけるコミュニティバスについて説明する。

概要

コミュニティバスは、地域内の住宅地や集落と鉄道駅や公共施設、病院などの施設を結ぶ生活路線、観光拠点を循環する路線などさまざまな種類のものがあり、従来の路線バスを補う公共交通サービスとして運行されている。上述のとおりコミュニティバスの明確な定義は存在しないため、一般路線バスとの明確な線引きは難しい。各地域の実情に合わせ、多種多様な運行形態のコミュニティバス路線が存在する。

先駆けは東京都武蔵村山市1980年に運行を開始した「武蔵村山市内循環バス」とされており、同じく1980年代日野市で運行開始した日野市ミニバス1990年代に現在のコミュニティバスの概念を採用して成功した武蔵野市ムーバスなど、東京多摩地域を先駆けとして、日本全国各地に広がっている。

自治体がバス事業者に運行を委託し、運行経費の赤字分を自治体が補填する方式が一般的であるが、新宿区新宿WEバスのように車両購入費のみを自治体が補助する場合もある。コミュニティバスは乗合バス事業者の路線がない(または撤退した)地域を運行し、しかも運賃は一般路線バスに比べて低廉に設定されることが多いため、収支均衡させることは極めて困難であり、純然たる営利事業として捉えることは適当でない。交通空白地帯の解消、公共交通の確保という公益的な観点から、自治体からの補助金により運行費用の赤字補填が行われるのが一般的である。

2006年10月の道路運送法改正前は、貸切バス事業者への運行委託は旧21条(21条バス)、自治体所有の自家用自動車での運行は旧80条(80条バス)に基づき運行されていた。道路運送法改正に伴い、21条バスは廃止され、道路運送法4条に基づく一般乗合バス(4条バス)に統合された。

狭隘路線であったり利用者が少ない場合は、小型のバスが使用されることが多い。旅客需要数や道路幅の関係で、乗合タクシーとして運行されることもある。宮城県石巻市稲井地区の「いない号」岩手県雫石町あねっこバスなどが該当する。またデマンドバスとして運行されることもある。

市町村合併平成の大合併)に関連して、合併した各市町村の庁舎や中心市街地相互間を連結する交通手段を確保するため、コミュニティバスの運行が開始された地域もある(例:さいたま市コミュニティバス西東京市はなバスなど)。

また東日本大震災の際は、津波被災地において自家用車が浸水した中で、移動手段としてコミュニティバスの支援が求められたこともあった2011年4月30日衆議院災害対策特別委員会における高橋千鶴子衆議院議員の東日本大震災で被災した自治体に関する発言

コミュニティバス一覧

運営方式

コミュニティバスの実際の運営方式は、大まかに以下のように分類できる。

運行主体が自治体で、業務を民間に委託するもの
  • コミュニティバスブームを全国に広めた東京都武蔵野市ムーバスなどのように、計画や運営は自治体が行い、運行業務は民間のバス事業者に委託するもの。
  • 収益が出た場合は自治体のものとなることが多く、バス事業者へは収益の有無にかかわらず、運行委託に関わる費用を支払う。公営バス民間委託と似た形態である。
  • 車両は自治体が購入し、バス事業者に貸与する形をとる場合も多い(ムーバスの車両は武蔵野市の保有である)。
  • 自治体が費用を支出するため、運賃は通常の路線バスより安価で、100円程度の均一運賃であることが多い。
運行主体がバス事業者で、自治体が補助金を出すもの
  • 民間のバス事業者が、一般路線バスと同じように開設し運営する。開設までのルートや運行本数などに関しては、自治体や地域の町内会などと協議を重ねることが多い。
  • 営業収益はバス事業者の収益となることが多いが、車両購入費や運行経費の赤字分などに対し、自治体が補助金を支出する。赤字分のみ補填、車両購入費のみ自治体が負担など、負担の割合はさまざまである。
  • 近年開設された都市部のコミュニティバスにこの方式の路線が多数ある。
  • 東京都調布市調布市ミニバスのように、自治体とバス事業者の共同運営の路線と、バス事業者の単独運営の路線が混在する調布市ミニバス(コミュニティバス) 調布市公式サイト、2019年9月1日閲覧。調布市ミニバス概要 (PDF) 調布市公式サイト、2019年9月1日閲覧。など、複雑な形態になっている場合もある。
一般路線バスに自治体が補助金を出してコミュニティバスとするもの
  • バス事業者が運行する一般路線バスに対し、自治体が補助金を出して運行させるもの。基本的に収益はバス事業者の収益となり、路線開設・変更やダイヤ改正の届出などは事業者が行う。
  • 事業者が廃止を申し出た路線や過疎地の路線などの存続のため赤字分を補填する場合、公共交通の利便性向上や利用促進などの何らかの理由により、通常の事業者負担では赤字となりやすく実施しにくい低運賃の路線を開設させる場合などに行われる。
  • コミュニティバスと自治体補助による一般路線バスは区別がつきにくいものも多く、運賃体系や使用車両などが同じであれば、乗客や地域住民はコミュニティバスかどうか意識せず利用している場合も多い。
  • 前述のように都市部においても、近年開設されるコミュニティバスはこれと似た方式であることが多い。一例として、東京都世田谷区のコミュニティバスは区内を運行するバス事業者(東急バス小田急バス小田急シティバス)の一般路線に補助金を出す方式で開設されている世田谷区のコミュニティバス 世田谷区公式サイト、2019年9月1日閲覧。また東京都豊島区では国際興業バス廃止を申し出た路線に区が補助金を出して「地域公共バス」として存続させている地域公共バス「池07系統」をご利用ください。 豊島区公式サイト、2019年9月1日閲覧。
  • なお、コミュニティバスではない一般路線バスでも、赤字路線に対して自治体が補助金を出して運行経費を補填することがある。
地域住民によるNPO法人など民間団体が運行主体となるもの
自治体バス(市町村営バス)
廃止代替バス
  • 過疎地域や山間部における、既存事業者の撤退や鉄道・バス路線の廃止に伴う廃止代替バス。上述の自治体バス(市町村営バス)として運行される場合、コミュニティバスとして運行される場合の双方が存在する。
福祉バス・住民専用バスなど、利用者を限定したもの
  • 誰でも利用できる乗合バスではなく、福祉バスや住民専用バスとして、利用者を高齢者障害者などの交通弱者、あるいは運行自治体の住民などに対象を限定した路線も存在する。誰でも利用できるコミュニティバスとして運行開始したものの、利用者低迷や不採算から利用者限定の運行に変更される場合もある(例:東京都西多摩郡日の出町ぐるり〜ん日の出など)。またその逆に、日立自動車交通が運行受託する東京都千代田区風ぐるまのように、福祉バスとして運行開始した路線が一般利用者に開放されコミュニティバスとなるケースもある。

一般的にはコミュニティバスとみなされないもの

  • 都営バス横浜市営バスなどのような従来の公営バスは、地方公営企業として公営企業会計が適用され、一般会計と分離され、独立採算による運営であるという点でコミュニティバスと大きく異なる。ただし赤字基調であり、一般会計から繰出(運行補助)を行い運行を支えている場合や、民間のバス事業者に運行業務を委託している場合がある。
  • なお、公営バス事業者が運行するコミュニティバス路線(例:大阪市営バス赤バス)、自治体から運行受託する路線(例:都営バスが東京都江東区から運行受託するしおかぜ)なども存在する。
すべての業務をバス事業者が行い、自治体が関与しない場合(一般路線バス)

あゆみ

導入の発端

香港のミニバス(小巴)については、八達通も参照。

先駆けと展開

日本におけるコミュニティバスの先駆けは、1980年代東京多摩地域から始まった。

1980年昭和55年)7月1日に運行開始した、東京都武蔵村山市武蔵村山市内循環バスがその先駆けであるとされる。武蔵村山市は東京都の市で唯一、市内に鉄道駅が存在しないため、交通不便地域が多数存在した。その解消のため、市がマイクロバスいすゞ・ジャーニーLを購入し、立川バスに運行を委託したものである。

これに続いて1986年(昭和61年)8月20日、東京都日野市日野市ミニバスが運行開始した。これは市が行政サービスの一環として、市内のバス路線のない地域にミニバスを運行するというものである。当初の車両は小型バスの日野・レインボーRBが使用された。市が直接バス路線を開設することは現実的でないため、日野市内で路線バスを運行していた京王電鉄バス(当時:京王帝都電鉄)が路線開設と実際の運行管理を引き受けた。

1990年代には、1995年平成7年)11月26日、東京都武蔵野市ムーバスが運行開始した。計画段階から綿密な需要調査が行われた結果、循環経路・均一運賃・短距離間のバス停設置など、その後のコミュニティバスに共通する特徴を方向づける運行形態が採用された。運行は関東バスに委託され、車両は開発中であった小型バスの日野・リエッセが使用されることになり、日野自動車の協力も得られた。運行開始後、ムーバスは大きな成功を収め、テレビなどマスメディアでも相次いで取り上げられた。これに触発されて各地でコミュニティバスの開業が相次ぎ、「コミュニティバス」という概念が全国的に広まることとなった。

こうして東京多摩地域から始まったコミュニティバスは、ムーバスの成功によって全国各地に波及し、それぞれの地域のニーズに合った多様な取り組みがなされることとなった。

1997年10月1日静岡県磐田郡豊田町(現:磐田市)のコミュニティバス「ユーバス」の運行開始と同時に、日本初のICカード乗車券である「ユーバスカード」が導入された国土交通省乗車カードも参照)。ユーバスは遠州地方で初のコミュニティバスでもあったが、市町村合併により磐田市バスに統合された後、2015年3月31日に廃止されている。

1999年3月28日石川県金沢市金沢ふらっとバスが運行開始(北陸鉄道が運行受託)。車両は輸入車のクセニッツCITY-IIIを使用し、国内で始めて小型ノンステップバスをコミュニティバスとして導入した。斬新な車体で商店街アーケードの中をトランジットモールとして走行するなど、従来のバスになかった運行形態も注目を浴びた。

車両の進化

1995年8月28日に発売され、ムーバスでも使用された小型ツーステップバスの日野・リエッセは、前中2扉の路線仕様が標準で用意され、1997年12月8日には車椅子用リフトを備えたステップリフトバスも追加された。

1996年9月26日には、小型ワンステップバス日産ディーゼル・RNが発売。スロープ板が標準装備され、リフトよりも手軽に車椅子を乗車させることが可能となった。

従来のマイクロバス車両が定員や乗降などの面で路線バスとしての使用に難があったのに対し、小型バス車両の進化によってコミュニティバスに適した車両が生産されるようになり、それまでバスが入れなかった狭隘路線にもルートを通せるようになった。1990年代に入ってコミュニティバスが普及した背景には、こうした車両技術の進歩によるところも大きい。

2000年代に入ると、2002年にはノンステップバスの日野・ポンチョ(初代)、三菱ふそうからもエアロミディMEが発売され、車種選択の幅が広がった。

その後は、国内バスメーカーの再編(UDトラックスの撤退、ジェイ・バス設立)、交通バリアフリー法ディーゼル自動車排ガス規制自動車NOx・PM法ディーゼル車規制条例など)への対応により車種は集約され、小型バスの現行車種は日野・ポンチョ(2代目)のみとなっている。

歴史


File:TachikawaBus M-8 MM-Shuttle.jpg|武蔵村山市内循環バス(MMシャトル)
日野・リエッセ
File:Hino_Liesse_by_Hino,_Tokyo_Mini-BUS_(Keio_BUS).jpg|日野市ミニバス
日野・リエッセ
File:Kanazawa Flat Bus Konohana-route.jpg|金沢ふらっとバスで採用されたノンステップバス
クセニッツCITY-III
ファイル:NishiTokyoBus_B21251_Hamurun_EV_bus_charging.jpg|充電中のはむらん電気バス
日野・ポンチョ

共通的な特徴

おおむね次のような特徴を持つことが多い。

運行形態

既存のバス停留所鉄道駅などから遠く(300m程度)、また公共交通機関空白地帯で、狭隘路・坂道があったり、需要が小さいなどの理由により、通常のバス路線を導入する事が困難な地区を対象としている。既存のバス路線を補うように運行されている場合もある。

住宅地と、市役所などの公共施設・医療機関・金融機関・繁華街・ショッピングセンター・交通結節点鉄道駅バスターミナル)などを結ぶ。一直線から程遠い巡回型の経路設定や循環路線が多く見られる。また一方通行の循環路線も多い。中心地から離れた集落など、利用の少ない停留所は要望や予約が無ければ経由しない路線もある(デマンドバスも参照)。

一般的に通常のバス路線よりも停留所の間隔が短く、細かく停留所が設置されている。停留所には駅ナンバリングのように番号が振ってあるところもある。ナンバリング設定後にバス停を新設する場合、前後のバス停の番号に枝番号をつけたものを付与して対応することがある。路線上に存在する事業所(小売店舗・工務店・医院など)がバス運行に協賛している場合、その事業所名が停留所名として採用されることもある。

中規模以上の都市では、15分毎〜30分毎などの高頻度運行で、パターンダイヤとなっていることが多い。

通勤時間帯とデータイムでは異なる運行経路をとる地域も存在する。例として、北名古屋市の「きたバス」では朝夕に各住宅地と駅を往復し、昼間は公共施設・病院・商業施設等を循環する。また、毎日定時の運行ではなく決められた曜日のみ運行したり、学校の終業時刻などに合わせて曜日ごとに時刻が変わる路線もある。土曜・休日・お盆は運休する路線、年末年始は全便運休となる路線もある。大和高田市の「きぼう号」のように、第一・第三月曜運休という地域もみられる。

時間帯により運行形態が変わる地域も存在する。木津川市の「きのつバス」は奈良交通の一般路線と重複する区間が多いが、通勤通学に利用される朝晩は従来通り奈良交通が直接運行、主に高齢者が利用する昼間時はコミュニティバスとして集落内も経由する方式を採っている。また飯田市においても、信南交通が運行受託する「市民バス」の走らない時間帯は、地元タクシー会社が運行受託するデマンドタクシー「いいだ愛のりタクシー」を利用する仕組みが採られている。

その他、美濃加茂市の「あい愛バス」ではタブレットをバスに搭載し、音声合成でアナウンスを流し、時間・区分別乗降人数を記録するシステムを導入している。

運賃など

地域によって様々な仕組みがとられている。100円から200円程度の均一料金制、既存バスに合わせた運賃制度などが挙げられる。既存バスよりも安い運賃設定の場合、運行バス会社の定期券東京都シルバーパスのような福祉パスが利用できない場合も多々ある。大都市圏のコミュニティバスにおいては、SuicaPASMOスルッとKANSAIICOCAなどの交通系ICカードが使える地域がある。

専用の一日乗車券回数券、定期券を発行している自治体もある。定期券の場合、一般路線バスと同様に通勤・通学定期券の用意がある場合、福祉乗車証として高齢者や障害者などのみに発行する場合などがある。また路線維持のため、沿線の世帯ごとに毎月一定額の経費負担を行ったり、回数券を購入するといった協力が行われている地域もある。

運賃計算においては、車両運用の都合上、終着後ただちに系統番号を変え、または同じ循環経路に入る連続運行が行われる場合にも運賃計算を打ち切らず通算し、一旦下車の必要もない地域も存在する。通常、A-B間とB-C間は独立して運行しているが、A-C間を続けて運行する便にB停留所を跨いで乗車した場合(循環路線の場合は始終点を跨いだ場合)であっても改めて初乗り運賃が発生せず乗り越しできる路線もある。

参考文献

  • 鈴木文彦『路線バスの現在・未来part2』グランプリ出版、2001
  • 中村文彦『コミュニティバスの導入ノウハウ』現代文化研究所、2006
  • 中村文彦『バスでまちづくり』学芸出版社、2006
  • 松本幸正『成功するコミュニティバス』中部地域公共交通研究会、2009

脚注

関連項目

Category:交通政策

wikipediaより

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