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アンテナショップ(Antenna shop)とは、企業や地方自治体などが自社あるいは地元の製品を広く紹介したり、消費者の反応を探ったりする目的で開設する店舗のこと。地域活性化センターによると、アンテナショップの始まりは1994年ころ。バブル経済の崩壊で増えた東京有楽町や銀座の空き家店舗を利用して自治体が地域の特産品を売り始めたことがきっかけアンテナショップ、進化中 県名書かず・バルで県産酒・メロンで勝負:朝日新聞デジタル。
一般企業におけるアンテナショップは、主に消費者向けの最終製品を手がける企業が開設する。いわゆるショールームとしての機能のほか、自社製品のユーザー向けのサポート窓口・修理受付、消耗品の販売などを行うことが多い。また新製品のテスト販売を行ったり、アンテナショップ限定のグッズを用意したりする場合もある。
場所としては主に当該企業の本社ビル内やその周辺、あるいは人の多い繁華街に出店するのが一般的(例:メルセデス・ベンツ コネクション、ホンダウエルカムプラザ青山など)。最近ではキヨスクにアンテナショップの機能を持たせたものも登場している(詳しくはキヨスクの項を参照)。
またフランチャイズ展開を行うチェーンストアにおいては、直営店が実質的なアンテナショップの役割を担うことが多い。特に当該チェーンの本社・本部の周辺にある直営店では試験的なメニューの販売が行われたり、実験的な業態の店舗が開設されたりすることが多い。
企業が自社製品でなく、収益のほかに地域おこしへの貢献を目的として、地方物産など他社の製品を広く集めたアンテナショップを展開することもある。東日本旅客鉄道(JR東日本)の「のもの」東京の一等地で“地方”を売る「常設アンテナショップ」の熱い戦いダイヤモンド・オンライン(2013年9月12日)2018年4月12日閲覧、三越伊勢丹ホールディングスによる「旅するマーケット」(東京)三越伊勢丹HD、東京・虎ノ門にアンテナ店/各地の特産品で「旅気分」バイヤーの力を結集『日経MJ』2017年3月29日(ライフスタイル面)などである。
自治体が運営するアンテナショップの前身と言える存在として、1932年(昭和8年)に丸ノ内ビルヂング1階の空きブースに作られた、地方物産陳列所がある 立教大学観光学部(編)『大学的 東京ガイド:こだわりの歩き方』 昭和堂 2019年 ISBN 978-4-8122-1814-3 pp.183-200.。陳列所には15の自治体が協賛し、ジャパン・ツーリスト・ビューローの案内所を併設することで外国人観光客も対象として地方物産の案内や斡旋を行った。戦後は八重洲の国際観光会館と鉄道会館で同様の事業が行われたが、これらは全て小規模ブースが集合した業態だった。平成6年頃から、各自治体が独立した店舗をアンテナショップとして運営するようになった。
自治体のアンテナショップは、自治体やその外郭団体、自治体が出資または契約する企業により設置・運営される。食品や伝統工芸など特産品の販売促進が主たる目的で、観光客や旅行者、Uターン・Iターンの喚起、企業の誘致への波及効果も狙っている。そのため消費者や企業、他の地方や海外からの来訪者も多い東京都内に置かれることが多い。都内の自治体アンテナショップは2019年時点で79店と過去最多に増えている(地域活性化センター調査)「都内アンテナ店、最多の79店に」『日本経済新聞』朝刊2019年12月5日(首都圏経済面)2020年1月6日閲覧。。三大都市圏の中心都市である大阪市や名古屋市など、首都圏以外にも、一部自治体が出店している「新潟県のアンテナショップ、大阪と東京で勢いに明暗」産経新聞ニュース(2018年2月8日)2018年11月22日閲覧。北海道どさんこプラザ/店舗情報(2018年11月22日閲覧)。。都道府県が都内に設置する場合は、主として山手線沿線とその内側の都心部に立地している。有楽町駅前の東京交通会館のように、複数のアンテナショップが集まる施設もある。東京都も都内に設置しており、中には北海道や沖縄県のように複数のアンテナショップ(地元を含む)を展開する自治体もある沖縄県物産公社「わしたショップ」店舗案内(2018年11月22日閲覧)。。期間限定一例として、千葉県が東京のJPタワー内で2018年11月17日~12月15日に開設した「ちばI・CHI・BA」(2018年11月22日閲覧)。や、都道府県でなく市町村が商店街などに設けるアンテナショップ一例として、戸越銀座にある福井県坂井市のアンテナショップ(2018年11月22日閲覧)もある。
特産品の販売所だけでなくギャラリー、観光情報コーナーなども備えられている店もある。首都圏在住者などにとって遠方の物産や観光情報を入手できるだけでなく、地方出身者が故郷の食品などを買える場でもある。中には宮城県の「宮城ふるさとプラザ」、新潟県の「銀座・新潟情報館 THE NIIGATA」、三重県の三重テラス、香川県・愛媛県共同設置の「せとうち旬彩館」、鹿児島県の「かごしま遊楽館」など飲食店を併設するものもある。
徳島県が2018年に開設した「Turn Table」(ターンテーブル)は宿泊も可能であるアンテナショップ「徳島」掲げず出店 宿泊施設も 『毎日新聞』朝刊 2018年2月11日。
企業の場合にも共通するが、アンテナショップはPR活動が重要な要素となるため、都市部の中でも立地の良い場所が必然的に選ばれる。そのため、テナント料をはじめとした維持費が高くつくのが難点といえる。アンテナショップへの公的資金の投入額は最小で300万円、多いところでは2億円程度と言われており、人気店以外では採算割れする店も少なくない。
徳島県のように、自前のアンテナショップに替えて、近隣のコンビニエンスストア内に特産品コーナーを設けたケースもある。鳥取県と岡山県の合同アンテナショップ、とっとり・おかやま新橋館や香川県と愛媛県の合同アンテナショップ、香川・愛媛せとうち旬彩館のように複数の自治体で共同運営するところもある。
また最近では、地方の特産品・加工品等を地元の住民がそもそも知らない、というケースも増えていることから、地域による地域のためのアンテナショップを管内に設置する動きも出てきている。鳥取県の鳥取中部ふるさと広域連合が運営する「Coup! la cafe」(クラカフェ)などがその代表例である。
東京都内のアンテナショップは2020年にはピークの81店舗だったが、その後の新型コロナウイルス流行の影響や地価の高騰、通信販売の普及などを受け、2023年時点で67店舗まで減少した。アンテナショップが複数立地する日本橋地区や八重洲地区では再開発のため移転もしくは閉館するところもある。
一方で2024年頃から北陸新幹線の延伸や大阪・関西万博の開催などを背景として、関西圏へのアンテナショップ出店が増加している。