池田町
農村力を活かした「地域資源連結循環型農業」のまちづくり
池田町がめざしているのは「地域資源連結循環型農業」のまちづくり。
事例本文
自然や
環境、それにつながる生活
文化は池田町の何よりの宝だ。
池田町では
環境まちづくりを進めているが、
めざしているのは「地域
資源連結循環型
農業」を中心とした
まちづくりだ。
人やモノなど地域の
資源をつなげ循環させることでまちの力を強くしていこうというもの。
■「ゆうき元気正直
農業」
池田町では
農業を中心とした
環境まちづくりを進めているが、
その「
環境のまち」実現にむけた施策のひとつとして、
独自の
農産物認証制度「ゆうき・げんき正直
農業」を2000年にスタートさせた。
化学
肥料や
農薬に頼らず生産者や
消費者の健康と、
田畑の土やそこに棲む生きものも大切にできる制度だ。
「ゆうき・げんき正直
農業」に取り組むには、
まず生産者として登録を行い取り組む段階に応じた看板を農地に設置する。
その後、指導を受けながら
農作物が育てられ、栽培管理状況が書類と現地でチェックされ、
池田町、農林
公社、
農協、福井県の連携により、はじめて
認証シールが交付される。
池田町の大半の世帯は農地を持ち、その多くが米づくりをする兼業農家だった。
野菜はおもに自家消費用としてほぼ有機
農業に近いかたちでつくられていたという。
ゆうき・げんき正直
農業は、池田町の多くの農家が参加しやすいしくみで
有機農産物の生産を増やしている。
独自の
認証制度は3段階に分けられ、色分けとマークに描かれている
「ゆうきちゃん、げんきくん」というキャラクター人物の成長度合いで
その取り組みの進み具合がわかるようになっている。
低
農薬・無化学
肥料栽培は
幼稚園児のゆうきちゃん、げんきくんが描かれた黄色シール、
無
農薬・無化学
肥料栽培は学生服姿のゆうきちゃん、げんきくんが描かれた赤色シール、
そして、完全有機栽培では成人したゆうきちゃん、げんきくんが並んだ絵で青色シールとなっている。
シールと同じ絵の看板が「ゆうき・げんき正直
農業」に取り組んでいる農地には立てられており、
一目でわかるようにもなっている。
もうひとつ、「ゆうき・げんき正直
農業」の大きな特徴として取り上げられるのは、
1種類の
農産物を100人がつくり特産品化するのではなく、
100人それぞれが作った一つひとつを持ち寄り、
多様な
農産物を展開する少量多品目「百匠一品」方式で取り組んでいることだ。
認証農産物は福井市内のショッピングセンター内に設置した
アンテナショップ
「こっぽい屋」(池田弁で「ありがたい」という意味)で販売しているが、
農家の方が店頭に立ち、販売だけでなく旬の食材の紹介や調理法を伝えるなど、
訪れる人との
コミュニケーションを大切にしている。
また、「ゆうき・げんき正直
農業」に取り組む方はお年寄りが多く、
一連の活動は生きがいにもつながっている。
福祉の面からも大きな役割を果たしている取り組みである。
■生命にやさしい米づくり(
特別栽培米プロジェクト)
池田町は1992年という早い時期から米の
特別栽培を始めている。
足羽川の上流域に位置する町は
「
環境にやさしいということは様々な命にやさしいということ」という考えのもと、
特別栽培米プロジェクトを「生命にやさしい米づくり」運動と名づけた。
牛糞
堆肥を利用した有機米づくりは、2002年に町の
堆肥センターを完成させたことから
さらに取り組みをすすめ、2006年から
特別栽培米プロジェクト
(生命にやさしい米づくり運動)を本格実施している。
米は町内の
堆肥を使用した土づくりをもとに池田町独自の
特別栽培米栽培基準で育てられる。
特別栽培米の認定は、生産者の記録のチェックや圃場検査が行われ、
専門家に一般
消費者も加わった認定会議を経て行われる。
栽培区分は、無
農薬・無化学
肥料米で
農薬は使わない米を「極(きわみ)」とし、
減
農薬・無化学
肥料米で
農薬4成分までの米を「匠(たくみ)」の米としている。
そのあとには、減
農薬・減化学
肥料米で
農薬4成分までの「真(まこと)」
減
農薬・減化学
肥料米で
農薬9成分までの「舞(まい)」と続く。
2011年現在、312haの
水田のうち、およそ6割の196.5haで
特別栽培米が作られており、
最終的には全
水田でつくられることを
目標とし、農家、町や農林
公社、
消費者が一体となり
町全体で生命にやさしい米づくり運動を育てている。
特別栽培米プロジェクトの主な取り組みは次のとおり。
(1)町全体で統一した栽培基準の設定・
認証
(2)できるだけ
農薬や化学
肥料を押さえ、町内
堆肥を活用した育苗に取り組む。
(3)農林
公社や町・
農協と連携した栽培確認。集荷・乾燥調整・保管へのチェック体制
(4)
認証審査などへの
消費者の参画
(5)田んぼの生きもの調査など、
環境保全
(6)販売の一本化によるアピール力強化
■食
Uターン事業
前述の「ゆうき・げんき正直
農業」や「
特別栽培米プロジェクト」を支えているのが、
「食
Uターン事業」。
家庭の
生ごみを
資源として位置づけ、牛糞ともみ殻を混ぜて良質の
堆肥にするプロジェクトだ。
各家庭では水切り、分別をしっかりし、
新聞紙でくるんだ
生ごみを指定の紙袋に入れ、週3回ごみステーションにだす。
紙袋は片手で持てる程度の大きさで、臭いも少なく見た目にも清潔。
回収は
NPO法人環境Uフレンズの
ボランティアメンバーが2人1組になり、
専用の回収車アグリパワー号(2tトラック)で午前中に回収し、
堆肥化センターの「あぐりパワーアップセンター」に運ぶ。
その後、同敷地にある牛の
家畜小屋からの牛糞やもみ殻と混ぜられ、
堆肥「土魂壌(どこんじょう)」に生まれ変わる。
また、
堆肥製造過程で発酵時の蒸気から有機の液肥「土魂壌の汗」もつくられ、
ユニークなネーミングで関心をひいている。
アグリパワーアップセンターでできた
堆肥はほぼ町内で消費され、
「ゆうき・げんき正直
農業」や「
特別栽培米プロジェクト」によって
安心・安全な
農作物や米がつくられる。
そして、この
堆肥で育った野菜は各家庭や町内の小
学校給食で利用され
「食」から「食」への循環をつくっている。
小学校では「ゆうき・げんき正直
農業」の体験も行われるなど、
子どもたちへの
食育へとつげている。
ところで、
生ごみ回収を当番制で行っている99人(2011年3月時点)の
回収
ボランティアメンバーの1/3は
自治体職員だ。
きちんと会費を支払って早朝に
生ごみ回収をしている。
不思議に思われるかもしれないが、2人1組になっての回収の機会は職員と町民、
あるいは町民同士の
コミュニケーションを促進することにつながっている。
職員は同乗した町民との会話から、ふだんは役場で聞くことのできない情報も得られ
町民と
行政職員との
信頼を深める機会にもなっている。
「モノ」のリサイクルだけでなく、
生ごみを分別し食品
資源として出す町民、
回収する
ボランティア、
堆肥に再生する
堆肥化センター、
堆肥作物を作る農家、
農作物や
肥料を売る販売店、購入する人といった様々な主体をつなげる「環・和」の仕組みで、
人々のくらしや行動、人とその心もつなげ循環させている
「地域
資源連結循環型
農業」の
まちづくりは、さらにパワーアップを続けている。
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