飯田市
地域ぐるみで事業所のレベルアップと持続可能な社会をめざす地域ぐるみ環境ISO研究会による継続的活動
市役所と民間事業所が協働で研究会を構成し、「南信州いいむす21」を中心とした地域へのEMS普及をはじめ、一斉行動などに取り組む。研究会では飯田市が共同で事務局を担うなど率先的にかかわっている。形式にとどまらないサポート体制の結果、15年にわたって活動を継続している。
事例本文
■地域ぐるみ
環境ISO 研究会
1997 年、飯田市は地域の5 事業所と「地域ぐるみで
ISO に挑戦しよう研究会」を組織した。
この研究会の目的は、研究会メンバー自らが
ISO14001の
認証取得をめざすというもの。
これら事業所が
ISO14001 の
認証取得を達成したため、地域の
持続可能性を高めるという
目標を掲げた「地域ぐるみ
環境ISO 研究会」(以下、研究会)に発展させた。
この研究会は、地域への
環境マネジメントシステム(以下、
EMS) 普及のための
簡易版「南信州いいむす21」の構築・支援、相互内部
監査の実施、
参加企業の代表者会、工場見学、ぐるみ通信の発行などに取り組んできた。
飯田市は、設立当初からこの研究会に参加し、会の一員として係わっている。
2012年1月現在、研究会は31事業所で構成されている。
その従業員数は約7,000 人、その家族まで入れればそれ以上の規模になる。
近年、この研究会主導で、
ノーマイカーデーや
エコドライブ、マイバッグ持参、
省エネなどの一斉行動を展開し、成果を上げている。
研究会発足から15年を迎える。
継続的な活動のコツは、研究会を構成する事業所のモチベーションの維持・向上だ。
多摩川精機㈱と飯田市役所が事務局を担当し、共に研究会を運営している。
異動で担当者が替わりながらも、定期的に代表者会や実務者会を開催し、自主的な
研修会なども開催している。
研究会参加事業所の担当者一人ひとりの自発的・積極的な
環境改善に対する意欲を大切にしながら、
2010年からは新たに
温室効果ガス削減のプロジェクトを始めるなど、
積極的な
環境改善活動に取り組んでいる。
地域への
環境意識の普及啓発は、
行政のみでは頭打ちになってしまいがちだ。
そのような中、
ISO をキーワードにした地域の事業所との
協働の仕組みといえる。
■地域独自の
EMS構築と運用
研究会を構成する事業所のうち、2012年1月現在24事業所が
ISO14001 認証取得済み(うち1事業所が
自己適合宣言、1事業所が内部
認証)である。
これらの事業所は
認証取得のノウハウをこの「南信州いいむす21」に還元している。
飯田市は、本庁舎に限定した
ISO14001の基本的な取り組みを簡易なシステム
「市役所いいむす21」として、2000 年6 月から全ての出先機関・組織で展開し、
市長認定を年度末に2 回行ってきた。
「南信州いいむす21」は、この「市役所いいむす21」を拡大発展させたもので、
地域の大半を占める小規模・個
人事業所を対象として、事業所の実情に合わせ
無理せずに計画を立てて
環境保全活動を実施し、地域ぐるみで
環境保全に取り組もうという活動である。
また、同時に民間企業に比べ遅れている
自治体の
環境改善への取り組みの促進を
広域連合の
リーダーシップにより推進することをも意図している。
当初は
ISO14001の簡易版である「南信州いいむす21」のみであったが、
研究会のメンバーのレベルアップに応じて
自己適合宣言を南信州
広域連合と
研究会が確認する具体的な仕組みまで構築した。
具体的な仕組みと全体像は次のとおりである。
(1)「南信州いいむす21」のシステムは国際
規格の
ISO14001を基に、
取り組み内容に応じて初級・中級・上級・
ISO14001南信州宣言の4つの区分を設け、
ステップアップをめざす。
(2)事業所が区分に応じた取り組みを行なっていることを
地域ぐるみ
環境ISO研究会が審査し、南信州
広域連合が登録判定を行なう。
(3)
ISO14001南信州宣言は、国際
規格に位置付けられる「自己宣言」を
南信州
広域連合と研究会が確認する。
■「ぐるみ通信」の発行
「ぐるみ通信」は、研究会が発行するメールマガジンである。
飯田市は本研究会事務局として情報発信分野を担い、本通信を作成。
2001 年2 月からスタートし、2011年12月末までに320号が発信されている。
本通信は、研究会の機関紙としての役割にとどまらず、
全国へ向けた地元情報の発信媒体としても機能している。
その内容は研究会の活動報告、
EMS の情報、市役所の
環境政策や
地域の
環境活動など多岐にわたり、タイムリーな情報共有が可能となっている。
「ただのニュースではなく、参加事業所を応援するつもりで作っている」と担当者は語る。
ともに送られてくる四季折々の飯田市内の写真も、
市内外1,100 人にも上る購読者にとって魅力のひとつだ。
飯田市が京都議定書発効を受けて取り組んでいる温暖化防止の事業に対しても、
本通信は参加呼びかけとともに、実践のための理解へとつなげる情報媒体として機能している。
ISO の
認証機関も内容に注目しており、
認証に関しての実績の証拠としても扱われるようになっている。
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