住民投票

住民投票(じゅうみんとうひょう)とは、一定の地域において、住民のうち一定の資格を持つ人が立法公職罷免等について意思を明らかにするため行われる投票である。住民投票は、選挙ではないため、混同しないよう注意する必要がある。

日本における住民投票

日本国憲法の規定に基づく住民投票

日本国憲法第95条では、国会が特定の地方自治体にのみ適用される特別法(地方自治特別法)を制定しようとするときは、その地方自治体の住民による住民投票の結果、過半数の賛成がなければ制定できない、とされている。手続は国会法(67条等)及び地方自治法261条・262条等)に規定されている

複数の地方公共団体を対象とする地方自治特別法の場合、対象となる地方公共団体ごとに住民投票が実施される(旧軍港市転換法では横須賀、舞鶴、呉及び佐世保の各市で住民投票が実施された)。地方自治特別法は制定だけでなく改正にも住民投票を要する(例:伊東国際観光温泉文化都市建設法の一部を改正する法律)。ただし、地方自治特別法の廃止には住民投票は必要でない(例:首都建設法)。なお、現に国法上の地方公共団体が存在しない地域に適用する場合は地方自治特別法には当たらない(例:大規模な公有水面の埋立てに伴う村の設置に係る地方自治法等の特例に関する法律(秋田県大潟村の成立前に制定))

地方自治特別法の判断基準

ある法律案が日本国憲法第95条に規定されている「特別法」に該当し住民投票を実施すべきものかどうかは、地方自治法第261条の規定により、国会の最終可決院での可決後に同院議長から内閣総理大臣へ「特別法である」旨の通知がなされるかどうかで決まる。

特定の地方公共団体の地域を対象とする場合でも、その地域への国の行財政措置等を規律するための法律であれば地方自治特別法に当たらないとされている(例えば北海道開発法は地方公共団体としての「北海道」ではなく北海道地域の開発についての国の事務を定めるものと扱われる)

過去に住民投票を経た特別法はいずれも地方自治体に財政的優遇措置を与えるものであったため、全て賛成多数によって成立している。過去に住民投票を経た特別法はいずれも財政的援助を主たる内容とするものであったため憲法第95条の「特別法」にあたるのか疑問視する見解もある

一方、1997年通常国会における、駐留軍用地特措法の一部改正法案の審議・制定過程において、当該改正により新たに追加される条項(用地の暫定使用を認める規定)の対象となる用地が事実上沖縄県内に所在する在日米軍基地に関するものしかなかったことから、在日米軍に反対する立場の団体・個人等から「この改正法案は憲法第95条に規定する特別法であり、住民投票の手続を経ずに制定するのは同条違反である」との批判がなされた。しかし、当該改正については、条文には適用地域を沖縄県に限定する旨の文言はなく、建前上は全ての在日米軍基地に適用し得るものであったため、最終可決院(参議院)の議長から内閣総理大臣へ「特別法である」旨の通知は付されず、住民投票は行われなかった。

当該法案の初制定時及び実質的な内容の変更を伴う改正法案の場合はその通知が付されて住民投票が実施されるが、たとえば既に特別法として住民投票を経て制定された法律条文中の語句の一部変更(例:行政組織再編に伴う大臣職名部分の変更等)に過ぎない場合は当該議長の(住民投票は必要ないとの)判断により当該通知を付さないため、住民投票は実施されずに通常の一部改正法として速やかに上奏・公布される。住民投票の最後の例である「伊東国際観光温泉文化都市建設法の一部を改正する法律」(昭和27年法律第312号)には実質的な内容の改正が含まれていたため(一部改正法としては唯一この1例のみである)当該通知が行われ住民投票が実施されたが、その他の軽微な一部改正(下記のいくつかの法律に複数回行われている)には当該通知が付されなかったためいずれも住民投票は実施されなかった。

地方自治特別法の制定手続

制定の手続は次の順で実施される。
  • 議決後、最後に議決した議院の議長(衆議院の優越により、衆議院の議決が国会の議決となった場合には衆議院議長参議院の緊急集会において議決した場合には参議院議長)が内閣総理大臣に通知(地方自治法261条1項)
  • 内閣総理大臣が直ちにその旨を総務大臣に通知(地方自治法261条2項)
  • 総務大臣が、5日以内に、関係普通地方公共団体の長にその旨を通知し関係書類を移送(地方自治法261条2項)
  • 関係普通地方公共団体の長が、31日以後60日以内に、投票を実施(地方自治法261条3項)
  • 投票後、関係普通地方公共団体の長は関係書類を添えてその結果を総務大臣に報告(地方自治法261条4項)
  • 総務大臣は、直ちにその旨を内閣総理大臣に報告(地方自治法261条4項)
  • 内閣総理大臣は、直ちに当該法律の公布の手続をとるとともに衆議院議長及び参議院議長に通知(地方自治法261条5項)

これらの法律の公布文の冒頭には「日本国憲法第九十五条に基く及び市の警察維持の特例に関する法律市の警察維持の特例に関する法律(昭和27年法律第247号)
第一条 警察法(昭和二十二年法律第百九十六号)第四十条第三項の規定に基き国家地方警察に警察維持に関する責任の転移が行われた町村の区域をもつて、又はその区域と警察を維持しない他の町村の全部若しくは一部の区域をもつて、市が設置された場合においては、当該市は、同条第一項の規定にかかわらず、その議会の議決を経て警察を維持しないこととすることができる。
2 前項の議決は、当該市の設置の日から五十日以内に行わなければならない。この場合において、当該市長は、議決の結果を国家公安委員会を経て内閣総理大臣に報告しなければならない。
第二条 前条の規定により警察を維持しないこととなつた市は、住民投票によつて警察を維持することができる。
2 前項の住民投票については、警察法第四十条の三の規定を準用する。この場合において、同条中「町村議会」とあるのは「市議会」と、「町村」とあるのは「市」と、「町村長」とあるのは「市長」と、それぞれ読み替えるものとする。
では町村が運営する自治体警察を住民投票で廃止または復活することができた。

日本以外の国での住民投票制度

スイスアメリカ(一部の州に限る)等の国では、住民投票による直接立法も行われる。

台湾(中華民国)における「国民投票」については、マスコミなどにおいて「公民投票」、もしくは「公投」と呼ぶことが一般的である。

1回の投票で賛成か反対かを決することから、政情不安の国では住民投票が終了しても「賛成派」と「反対派」の対立が継続し、内戦暴動につながる場合もありhttp://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/01402387908424239?journalCode=fwep20</ref><ref name="dailymailcouk2762876">victory celebrations in Glasgow as tensions rise after divisive referendum sees Scotland stay in union</ref>、かえって民主主義を損なう危険性がある。141142また、否決された側が、裁判所に64し住民投票の正当性を問う事例も見られる<ref></ref>。14310アメリカ合衆国11 14465により重要な政策決定(例えば、66)で住民投票が行われることがある。14512スイス13 146スイスの直接参政権の主軸は、112国民投票113である。住民投票は、国民投票に取り込まれる形で、形骸化しつつある。147148スイスの住民投票にあたる参政権は、「ランツゲマインデ」である。<ref name="swissinfo"></ref>115ランツゲマインデを実施している州は、67と68の2つの州であり、毎年4月の最終日曜日に行われている。主な議題は、州の政治課題への賛否と、州議員や州判事の選出である。116意思表示の方法は、有権者による挙手であり69であることから、有権者の意思の対立が生じにくく、住民どうしの対立が生じにくい反面、70でないことから、活発な議論は行われなくなっている。そのため、参政権として意義についてスイス国内からの批判がある。<ref name="swissinfo"></ref>117また、公開投票は、71へ抵触するため、同条約の批准に際し、スイスはランツゲマインデを同条約の適用外とする特別条項を追加した。14914脚注15 16注釈17 18出典19 20関連項目21 929372(市町村合併)949573(議会制民主主義)969774 - 設置には住民投票を経た地方自治特別法の制定が必要とされた。9899 22外部リンク23 100101[https://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/96-6/murakami.htm 村上弘「スイスの住民投票-直接民主制と間接民主制との共鳴?」立命館法学1996年六号(二五〇号)1653頁(313頁)

  • Category:直接民主主義

    wikipediaより

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