飯田市
自然エネルギーと地域の経済循環で新しい公共の実現をめざし年々進化・進化を続ける「おひさま0円システム」
日本初の一般住宅を対象とした初期投資0円での太陽光発電普及政策で、金融機関、地域のエネルギー事業者、行政が協働した取り組み。社会状況やプロジェクトの成果、課題を詳細に分析し、さらに高い社会インパクトを出せるプロジェクト創出が可能になるよう、年々仕組みを進化・深化させている。
事例本文
国は、2009年11月から
太陽光発電余剰電力固定価格買取制度(以下「固定買取」)をスタートさせた。
これに合わせ飯田市は、地元の
環境ベンチャー企業である
おひさま進歩
エネルギー株式会社(以下「おひさま進歩」)と
協働で
「おひさま0円システム」を考案し、固定買取と太陽光
市民共同
発電事業を活用した住宅への
太陽光発電設備の普及に取り組んでいる。
本システムは、おひさま進歩が市内の住宅に3.5kW程度の
太陽光発電を初期費用0円で設置し、
毎月19,800円を9年間支払いで10年目に太陽光パネルを無償で
譲渡するというもので、
30件の募集に対し60件を越える申し込みを得る人気ぶりであった。
この
経済効果は約6,000万円と試算されている。
ネックとなったのは、
発電設備の設置費用である。
さらに、
持続可能性の観点からは地域にお金が回る仕組み、
民間が自律的に資金を回せるようにする仕組みの創設が求められる。
そのためには、地域
金融機関(ここでは飯田信用金庫)の協力が不可欠。
そこで、融資先の信用力とは別にプロジェクト自体から生じるキャッシュフローをもとに
融資に関する意思決定を行う
プロジェクト・ファイナンスという手法を用い、
担保がなくても融資が可能なシステムを構築した。
また、本システムは設置者がおひさま進歩なので
太陽光発電普及拡大センター(J-PEC)の
補助(7万円/1kWh)対象外になる。
代わりに市は独自財源(2009、2010年度は上限20万円、2011年度は上限15万円、2012年度は上限額未定)を
おひさま進歩に補助している(市は1キロワット当たりの補助額をJ-PECの補助水準に連動させている)。
さらに、0円で設置した設備は9年間で(おひさま進歩との)個人
契約者へ
譲渡されるが、
9年後のリスクを見越して、
契約書の内容を市とおひさま進歩が共同で作成し、
商品として成り立つようなパッケージ化を行った。
2010年度からは、徐々に民間の自立度向上、多様な主体の参加促進をめざし、
本システムの運営希望者を公募型
プロポーザル方式で募集、
最優秀提案のあった1社に事業実施のための
補助金を交付することとし、その結果、おひさま進歩が選ばれた。
おひさま進歩は、この
補助金のほか、
市民出資募集などの
自律的なファンドマネジメントと
金融機関からの融資を組み合わせて実施した。
市はこのプロジェクトの広報に力を注いでいるものの、
プロポーザルに応募した事業者はまだ多くない。
また、
太陽光発電をめぐり、設置した
市民と事業者との間のトラブルも増えている。
そこで2011年度は、当該事業の公益性をさらにブラッシュアップさせることに焦点を当て、
プロポーザルのルールを規定した要綱を見なおした。
例えば選抜基準を公表し、採択・不採択を問わず選抜の理由をきめ細かく応募者にバックすることや、
より提案の質を高めていくために前年度と比較して改善されたところの提案を優先するようにした。
その結果、2011年度も採択されたおひさま進歩の提案には、
太陽光発電で生まれる
環境価値を地域版
エコポイントとして
地域で流通する仕組みを構築する、というチャレンジングな企画が追加された。
この新たな提案については早ければ2011年度内に運用が開始される予定だ。
本事業は、
自治体単独で実現することは困難であり、おひさま進歩が従来までに培ってきたノウハウと、
公益性の高い事業に対する飯田信用金庫の理解があって初めて実現できた事業であり、
地域内の
ステークホルダーの連携という点でも先駆的である。
自治体情報
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