財産区(ざいさんく、)とは、日本における特別地方公共団体の一種。
財産区は市町村の一部で財産を有し若しくは公の施設を設けているもの又は市町村の廃置分合若しくは境界変更の際の関係地方公共団体の財産処分に関する協議に基づいて市町村の一部が財産を有し若しくは公の施設を設けるものとなるものをいう(地方自治法第294第1項)泉留維・齋藤暖生・浅井美香・山下詠子「コモンズと地方自治」(J-FIC)24頁。
財産区という名称は1947年で初めて法律で規定されたが、概念自体は1889年から存在した泉留維・齋藤暖生・浅井美香・山下詠子「コモンズと地方自治」(J-FIC)23・28・38頁。財産区には、市制町村制施行の際(明治22年)認められた旧財産区と市制町村制施行後の廃置分合又は境界変更の際の財産処分の協議により設けられた新財産区の2種類がある泉留維・齋藤暖生・浅井美香・山下詠子「コモンズと地方自治」(J-FIC)45頁。旧財産区の区域は明治の町村合併前の旧村であり、通常は部落単位で構成されている。一方、新財産区の区域は昭和の大合併(またはそれ以降の市町村の廃置分合)より前の市町村の区域である。旧財産区は徳川時代から部落住民の入会財産であったものを公有財産に組み入れようとした権力の政策に由来するものであり、新財産区は戦後の町村合併に際し、新市町有に編入されることを拒否して旧町村単位で財産区をつくる場合に生じたものである古谷健司「財産区のガバナンス」(J-FIC)95頁。
なお、財産区の区域が二以上の市町村の区域にまたがる時は、それぞれの属する市町村の区域ごとに分立して独立の財産区となるか、あるいは一部事務組合の形態をとることになる。
財産区が扱う財産として主なものとして山林、畑、ため池、墓地、温泉、観光農園がある泉留維・齋藤暖生・浅井美香・山下詠子「コモンズと地方自治」(J-FIC)17-22頁。
1954年の地方自治法改正により掲げられた財産区運営の二大原則は財産区住民の福祉を増進することと市町村の一体性を損なわないことである(地方自治法第296条の5第1項)泉留維・齋藤暖生・浅井美香・山下詠子「コモンズと地方自治」(J-FIC)48頁。
法律上は市町村の住民で当該財産区の住所を有する者は、財産区設置前からの旧来からの住民であろうが、財産区設置後に転入してきた住民であろうが、全て財産区住民となり平等な権利義務を持つ泉留維・齋藤暖生・浅井美香・山下詠子「コモンズと地方自治」(J-FIC)46頁。しかし、当該財産区に実質入会集団が存在している時に、現実には住民の中の入会集団の構成員だけが権利を行使している場合が多い。
財産区有地における入会利用権の法的性質は民法上の入会権か地方自治法上の旧慣使用権か、裁判所と行政の間で未だに解釈が一致していない。これまでの判例では一貫して入会権、すなわち私権論と取っており、一方で旧自治省を初めとする行政官庁では一貫して旧慣使用権、すなわち公権論を取っている。
財産区の財産および公の施設に関し特に要する費用は財産区の負担とされる(地方自治法第294条第2項)泉留維・齋藤暖生・浅井美香・山下詠子「コモンズと地方自治」(J-FIC)49頁。財産区の会計は市町村の会計と分別しなければならない(地方自治法第294条第3項)。だが、必ずしも特別会計を設けなければならないということではない。
財産区の財産は公有財産にあたるため、その財産に対する固定資産税及びその財産から生ずる収益に対する市町村民税は賦課されない。
隣接する神戸市への合併にあたって合併後の市長の決裁が必要となる財産区を設けることを避け村有財産を財団法人住吉学園へ寄贈・移管した住吉村(合併後は神戸市東灘区の一地区)の例もある。