飯田市
地域ぐるみで取り組む開発途上国の人材育成・地域づくり支援〜フィリピン・レガスピ市における住民参加の上水道建設プロジェクトをはじめとして〜
(1)自治体としてはめずらしい、途上国自治体との継続的な交流・支援活動
(2)公民館活動として地域住民が担い手として参加している
(3)受け入れ側、訪問側が双方に学び合い、それぞれの地域づくりにつながるスタイル
事例本文
■参加型
地域社会開発とは
参加型
地域社会開発(Participatory Local Social Development:PLSD)は、
第三世界に対する一方的に物資を与える形での援助が単発に終わり、
有効に活用されなかったという反省に基づき、住民自らが問題を見つけ、その解決の方法を学び、
実行する力をつける(
エンパワメント)のを支援するという開発援助の手法である。
■プロジェクト始動のきっかけとなった飯田市の
公民館活動
このプロジェクトは、もともと
日本福祉大学が2005~2007年度にかけて
JICAの
委託事業として始めたものである。
これに飯田市が関わることになったきっかけは2つある。
それは、
(1)
JICAが主催する開発
途上国政府職員対象のPLSD
研修にフィリピン・レガスピ市の職員が参加し、
ぜひ自国で具体的にこの手法を取り入れたいというリクエストがあったことと、
その
研修講師を務めていた飯田在住の
市民メンバーが
「ほんとうに効果のある
研修にするには直接現場にかかわる取り組みが必要」と
提案したことがうまくマッチングしたこと、
(2)PLSD手法を開発した大濱裕氏(
日本福祉大学)が以前から国内でPLSD手法展開に
最も適したモデルの事例として飯田市の
公民館活動に注目していたこと、である。
■プロジェクトの概要
目的は、レガスピ市の
貧困地帯といわれるプロ村、エスタンザ村という100戸ほどの
集落の開発である。
両村に共通する課題は飲用水確保であった。
フィリピン国内での支援体制構築とともに、飯田市はそのプロジェクトパートナーとして、年に1度、
研修生を受け入れ、
公民館活動(竜丘
公民館)や
市民による
地域づくり
(上久堅地区における
簡易水道自主管理の仕組みなど)の取り組み紹介などを担った。
研修生は竜丘
公民館で、ギフチョウ保護や古墳保全の活動、
高齢者が主体的な
学習を進める「大人の学校」の取り組みなどを学んだ。
上久堅では、
簡易水道、
財産区、集会施設などの共有
財産を住民自らが管理する実際を学んだ。
飯田市からも年に1度訪問団を派遣し、相互に学び合った。
このプロジェクトを経験した成果は両村のその後を見ればわかる。
プロ村では市の湾岸道路建設によって漁船の出入りに支障が出るという計画に対し
要望を行い、計画変更を勝ち取った。
エスタンザ村では市に対し
保育所の建設を要望し実現させた。
保育所は住民の話し合い、学び合いの場として「
公民館」的にも活用されているという。
■広がり深まる飯田型地域開発
飯田市はこれまでに54か国、300人にのぼる
途上国職員を受け入れ
研修を実施してきた。
インドネシアやタンザニアなどではPLSD手法を取り入れたプロジェクトが具体的に始められているという。
また、フィリピン・レガスピ市とのプロジェクトを「種」に、様々な「芽」も出始めている。
そのひとつが幸福王国として注目を集めている
ブータンからの
研修生受け入れである。
2011年7月には
ブータンからの
研修生を講師にしたセミナーも開催した。
受け入れ側としての飯田市が
ブータンに学ぶために企画されたものだ。
飯田市にとって今後も組織的に
途上国との関係を継続する体制など、課題もある。
しかし、レガスピ市や
ブータンに限らず、
途上国との
研修を通じた交流は飯田にとって、
自らの日常を原点にさかのぼって見直す学びの機会であるとともに、
「私たちのすすめる
地域づくりそのもの」(受け入れ窓口担当の飯田市職員、木下氏の言葉)であり、ますます発展を期待したい。
(参考文献)
木下巨一「
途上国支援に学ぶ、明日の
公民館活動」(社団法人全国
公民館連合会「月刊
公民館」,第653号,2011年10月号,pp.16-19)
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