財政(ざいせい、)とは、国家や地方公共団体がその任務(「資源配分機能」と「所得再分配機能」と「経済の安定化機能」の三つをしっかりと持続的に果たす事)を遂行するために営む経済行動で、総体収入の取得のための権力作用と、取得した財・役務の管理・経営のための管理作用とがある。これらの現象を学ぶ学問が財政学である。
財政には財源は必要ないが、日本政府の一般会計の歳入は「公債金」と「租税」と「印紙収入」と「その他の収入」から構成されている。 その他の収入には政府貨幣発行益がある。
国家にとって「税は財源ではない」、「税は景気の調整弁である」との意見も多い。
MMT(現代貨幣理論)研究者である中野剛志によれば、通貨発行権を有する国家と通貨発行権を有しない地方公共団体の財政は全く事情が異なるので、それらを混同してはならない。「日英米のように自国通貨を発行できる政府(中央政府+中央銀行)の自国通貨建ての国債はデフォルトしないので、変動相場制のもとでは、政府はインフレ率が許す限り財政政策をすることができる。」という。
消費税は、逆進性が高い税制であるために財政の基本機能である「所得の再分配機能」を損なうし、消費に対する罰金になっているので消費を減退させて「経済の安定化機能」も損なうことで、財政を不健全化させているとの指摘が次のようにある。
財政は、積極財政と緊縮財政の綱引きの歴史となっている。また、歳入と歳出のあり方は、国の構造や方向性に大きく影響した。
3世紀頃のローマ帝国は、膨大な社会資本維持や異民族侵入防御のための歳出により、都市の財政負担が膨張し荘園化による帝政崩壊の一因となった。
16世紀になると、スペイン・ポルトガルは、南米からの莫大な銀収入により、莫大な浪費を続け欧州に価格革命をもたらした。また、明は、未熟な紙幣を流通させることに失敗し、一条鞭法によって銀収入に統一した。
17世紀にはイギリス・フランスなど、絶対王政の国々は対外侵略に明け暮れ、莫大な国債残高を抱えていた。
日本は明治維新後、米現物が中心だった歳入を地租改正によって貨幣経済に合わせた。
ケインズ経済学誕生前夜、イギリスなどの多くの国の大蔵省・財務省は、支出を税収に一致させる均衡財政主義を採用していた岩田規久男 『経済学的思考のすすめ』 筑摩書房、2011年、80頁。。20世紀にはいるとアメリカは、世界恐慌に際して、均衡財政主義を破り積極的な歳出増額により失業者救済を図った。1942年に日本は、米ドル建て国債(ソブリン債)のデフォルトに陥っている。
1947年(昭和22年)、戦後混乱期の日本では日本国債の発行額が税収を上回り、それが戦後インフレーションの原因になったという反省から財政法が制定され、赤字国債の発行と日銀の赤字国債引き受けを禁止して、均衡財政主義を取ることとなった。戦後の日本は、世界銀行からの借り入れにより、大規模なインフラストラクチャー建設を実施。産業開発と高度経済成長により得た歳入で、期日どおり利付きで世界銀行へ返済した。日本が延滞や棒引きを起こさなかったことは世界銀行を驚かせた。1965年(昭和40年)には日本で赤字国債の発行が再開され、1990年にはバブル景気の税収増によりいったん発行額ゼロになるも1994年には再開された。
1998年には、アジア通貨危機を受けてロシア財政危機が発生。ロシアは債務不履行(デフォルト)状態になった。
2001年には、アルゼンチンがデフォルト危機となった。
2007年、アメリカの住宅バブル崩壊に端を発した世界金融危機が発生してからは、世界各国・各地域で財政危機も発生している。
2008年10月には、カリフォルニア州が財政危機表面化した。
2010年には、ギリシャの財政状況からソブリン・リスクが意識され、2010年欧州ソブリン危機が発生した。スペイン、ポルトガル、イタリア、アイルランドなどユーロ加盟諸国(PIIGS)への波及が懸念され、各国が危機を回避するよう対策をとっている。
2013年、韓国は家計企業政府の負債総額(2012年末時点)が3607兆3000億ウォン(約307兆8200万円)に達し、2012年の名目国内総生産(GDP、1272兆5000億ウォン)に対する負債総額比率は過去最大の283%となった韓国の負債比率が過去最高に GDP比283%聯合ニュース 2013年3月27日。
イギリスの債務残高の対GDP比は、ナポレオン戦争時で250%以上、1920年頃で約30%、第二次世界大戦後の1950年で250%、1990年頃で約30%、2010年で約80%となっている高橋洋一 『日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える』 光文社〈光文社新書〉、2010年、118頁。。