コイ


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コイ学名Cyprinus carpio)は、コイ目コイ科に分類されるで、比較的流れが緩やかなや池、沼、、用水路などにも広く生息する淡水魚である。ニゴイとは近縁ではない。

生態

コイは外見がフナに似るが、が体に対して小さく、口もとに2対の口ひげがある。体長は 60センチ程度だがまれに1メートルを超すものもいる。飼育されたり養殖されてきた系統の個体は体高が高く、動きも遅いが、野生の個体は体高が低く細身な体つきで、動きもわりあい速い。なお雌に比べて雄の方が頭が大きい。

食性は雑食性で、水草貝類ミミズ昆虫類甲殻類カエル、他の魚の卵や小魚など、口に入るものならたいていなんでも食べる。口にはないが、のどに咽頭歯という歯があり、これで硬い貝殻なども砕き割ってのみこむ。さらに口は開くと下を向き、湖底の餌をついばんで食べやすくなっている。なお、コイにはがない。コイ科の特徴として、ウェーバー器官を持ち、音に敏感である。

産卵期はから初夏にかけてで、この時期になると大きなコイが浅瀬に集まり、バシャバシャと水音を立てながら水草に産卵・放精をおこなう。一度の産卵数は50万-60万ほどもある。卵は付着性で水草などに付着し、数日のうちに孵化する。稚魚はしばらく浅場で過ごすが、成長につれ深場に移動する。

生命力は極めて強く魚にしては長寿の部類で、平均20年以上でまれに70年を超す個体もある。の年輪から推定された最長命記録は、岐阜県東白川村で飼われていた「花子」と呼ばれる個体の226年だが、これは信憑性が疑問視されている。長寿であることのほか、汚れた水にも対応する環境適応能力があり、しかも水から上げてしばらく水のないところで置いていても、他の魚に比べて長時間生きられるようである。

の中流や下流、などの淡水域に生息する。飼育されたコイは流れのある浅瀬でも泳ぎまわるが、野生のコイは流れのあまりない深みにひそんでおり、産卵期以外はあまり浅瀬に上がってこない。を登るということがよく言われるがこれは中国神話伝説の類に由来する言い伝えであって、普通程度の大きさのコイが滝を登ることは通常は無い。コイはジャンプが下手であり、『モジリ』という水面下まで上がって反転する行動が一般にはジャンプと誤認されていることも多い。ただし小型のコイはまれに2メートル程度の高さまでジャンプすることがあり、この場合は滝を登ることがありうるものの、格別に「滝を登る」という習性がコイにあるわけではない。

ノゴイ

漁師や釣り人などから、養殖され、放流もよく行われている体高の高いコイと、琵琶湖などの湖や四万十川のような大きな河川に見られる体高が低いコイの性質が著しく異なることが古くから指摘されていた。後者は「ノゴイ」(野鯉)と呼ばれて前者の系統で野生繁殖しているものと区別されており、シーボルトなど従来よりこの相違に注目する研究者も多少はいた。21世紀になってコイヘルペスウイルスによる感染症の流行で捕獲しにくいノゴイの死体が多数得られたことから、これを用いて遺伝子解析した研究が2006年になって報告された。それによると、外来の体高の高いコイとノゴイは種レベルに相当する遺伝子の差があることが報告され、日本列島在来の別種として新種記載の必要性も指摘されている。馬渕浩司(2013年6月2日)「絶滅危機!日本のコイ」『サイエンスZERO』第427回。NHK教育テレビジョン

分布

コイ本来の分布

もともとは中央アジア原産とされるが、環境適応性が高く、また重要な食用魚として養殖、放流が盛んに行われたために現在は世界中に分布している。日本のコイは大昔に中国から移入された「史前帰化動物」とされたこともあったが、琵琶湖など各地に野生のコイが分布し、第三紀地層から化石も発見されていることから、やはり古来日本に自然分布していたとされる。シーボルトの『日本動物誌』シーボルト『日本動物誌魚類』京都大学電子図書館。においても、Cyprinus conirostrisCyprinus melanotusCyprinus haematopterus の3種が紹介されているが、学術的にさほど注目もされず今日に至っている。
欧米でもドイツなどでは盛んに養殖され、食用の飼育品種も生み出されている。

コイによる生態系の破壊問題

の変種は、その色、模様、鱗の有無で見分けることができる。まず主な色としては、白、黒、赤、青、緑、黄色、紫およびクリーム色がある。また、ニシキゴイには鱗に金属のような光沢があるものがあるが、こういったものは金鱗・銀鱗と呼ばれる。また、ほとんど全ての種に対して鱗のない変種がある。日本のブリーダーはそれらを「ドイツゴイ」と呼んでおり、日本産のニシキゴイとドイツ産のカガミゴイ(鏡鯉)を交配することで鱗のない変種を作り出している。それらドイツゴイには側面に大きな鱗を持つものもいるが、まったく鱗のないものもいる。

また、バタフライコイ(1980年代に開発された、長くゆったりと垂れるひれが特徴的)は、実際にはアジアコイとの交配種であり、本物のニシキゴイとは見なされていない。

可能な変種は限りないが、ブリーダーは特定のカテゴリーで識別し命名している。もっとも知られたカテゴリーは御三家である。御三家とは、紅白、大正三色、および昭和三色の三つである。

代表的な品種

名前のついた主な変種は次の通り:錦鯉品種紹介錦鯉の種類品種と系統錦鯉の品種
紅白 :白い肌に赤い模様がある。最もポピュラーな品種。
大正三色 :白い肌に赤と黒の模様がある
昭和三色 :黒い肌に赤と白の模様がある
浅黄 :上面に薄青い鱗があり、下部に赤い鱗がある。
秋翠 :浅黄と鏡鯉との交配により、生み出された品種。体色は浅葱色で部分的に鱗がついた浅黄の変種。初代秋山吉五郎が作出
べっ甲 :白、赤、黄色の肌に黒い模様がある
写り物 :赤、白、または黄色の模様がある黒いもの
五色 :ほとんど黒で、赤、茶色、青のアクセントが入ったもの。
黄金 :無地のもの。普通のものか金属光沢がある。色には赤、橙、プラチナ、黄、クリームなど。
孔雀 :鱗が黒く、オレンジと白の体色を持ち、光沢があるもの。
変わり物 :その他のタイプのもの。

コイの飼育

普通のコイは頑丈な魚で、錦鯉もその頑丈さを受け継いでいる。小さな器から大きな屋外の池までどんな場所でも飼える。ただし、コイは90センチ程度まで育つことがあるため、コイの大きさに見合う水槽または池が必要になる。伝統的な屋内用アクアリウムは、丸いプラスチックの桶ほどには好ましくない。コイは冷たい水を好む魚であるため、夏に水が暖かくなる地方では池の水深を1メートル以上にするのが望ましい。冬に寒くなる地方では、全体が凍ってしまわないように水深は少なくとも1.5メートルにするのが望ましい。空気バブラーと桶形ヒーターを備えた広い場所に置くのもよい。

錦鯉の多くは明るい色をしているので、捕食者に対しては格好の標的となる。サギカワセミアライグマネコキツネ、アナグマ、猛禽類などに池中の錦鯉を食べ尽くされてしまう場合があるため、屋外の池で飼育する際はサギが立てないだけの深さと、哺乳類の手が届かないような水面上のオーバーハング、および上空からの視線を遮るために上を覆う木陰を備えるといった設計が求められる。池の上面を網やワイヤーで囲う必要もあるかもしれない。ただし、山間に近い場合、稀に絶滅危惧種の水辺を好む野鳥がかかる事があり網は避けた方が良い。また池は、水を清潔に保つためのポンプと濾過システムを備えていなければならない。

コイは底で餌をとる魚であるが、沈む餌は食べ残しが水質を悪化させるおそれがあるため、単に栄養バランスが取れているだけではなく、水に浮くように作られている餌を与えると飼育の手間がかからないとされる。水に浮く餌を与える場合には彼らが餌を水面近くで餌を食べている間に、寄生虫や潰瘍がないかチェックすることもできる。コイは餌をくれる人を識別するので、餌の時間になると集まってくる。彼らは手から餌を食べるように教えることもできる。冬には消化器系の動きが遅くなりほとんど停止するので、餌はほとんど食べなくなり、底の水草をかじる程度になる。春になり水が温まるまでは食欲は戻らない。

日本では1990年代ころから観賞魚として熱帯魚が主流になってきているが、海外では錦鯉人気が上がってきている。インターネットの普及に従い、インターネット販売も広まっている。

産卵、孵化、稚魚の飼育などの方法は金魚と同じでよい。ある程度成長するまで金魚との識別が困難であるため、鯉と金魚を区別したい場合は、金魚と別の容器で飼育することが望ましい。

食材


コイ(100g中)の主な脂肪酸の種類USDA National Nutrient Database
項目 分量(g)
脂肪 5.6
飽和脂肪酸 1.083
一価不飽和脂肪酸 2.328
16:1(パルミトレイン酸 0.655
18:1(オレイン酸 1.15
20:1 0.071
22:1 0.402
多価不飽和脂肪酸 1.431
18:2(リノール酸 0.517
18:3(α-リノレン酸 0.27
18:4(ステアリドン酸 0.058
20:4(未同定) 0.152
20:5 n-3(エイコサペンタエン酸(EPA)) 0.238
22:5 n-3(ドコサペンタエン酸(DPA)) 0.082
22:6 n-3(ドコサヘキサエン酸(DHA)) 0.114

食材としての鯉は、福島県からの出荷量が最多内水面養殖業収獲量 都道府県別・魚種別収獲量 農林水産省で、鯉こく(血抜きをしない味噌仕立ての汁)、うま煮(切り身を砂糖醤油で甘辛く煮付けたもの)、甘露煮にする。稀に唐揚げし、スナック菓子のように食べることもある。また、洗いにして酢味噌や山葵醤油を付けて食べる例もある。しかし、生食や加熱不完全な調理状態の物を摂食すると、肝吸虫こんなに怖い寄生虫 厚生労働省検疫所有棘顎口虫 () による寄生虫病を発症する可能性がある喉頭顎口虫症の1例 耳鼻と臨床 Vol.4 (1957-1958) No.1 p.61-64)。捕獲した鯉は、調理に際しきれいな水を入れたバケツの中に半日-数日程入れて泥の臭いを抜く。さばくときは濡れた布巾等で目を塞ぐとおとなしくなる。

藍藻ゲオスミンや2-メチルイソボルネオールを作り、これが皮膚や血合に濃縮される。このゲオスミンが、鯉やナマズなど水底に棲む淡水魚が持つ泥臭いにおいのもとでもある。ゲオスミンは酸性条件で分解するので、など酸性の調味料調理に使えば泥臭さを抑えることができる。

食中毒

コイの胆嚢(苦玉)は苦く、解体時にこれをつぶすと身に苦味が回る。胆嚢にはコイ毒(毒性物質は胆汁酸5-αチブリノールスルフェノール)が含まれている場合があり、摂食により下痢嘔吐腎不全、肝機能障害、痙攣麻痺、意識不明を引き起こすほか、まれに死亡例もある<特集>マリントキシン-神戸市環境保健研究所自然毒のリスクプロファイル:魚類:胆のう毒厚生労働省。その反面、視力低下やかすみ目などに効果があるとされ、鯉胆(りたん)という生薬名で錠剤にしたものが販売されている。

日本

海から離れた地域では古くから貴重な動物性タンパク源として重用され、将軍天皇に出される正式な饗応料や日常的にも慶事・祝事の席などでも利用されてきた中澤弥子、鈴木和江、小木曽加奈、吉岡由美、コイ刺身の食味と物性 : 佐久鯉と福島産鯉の比較 長野県短期大学紀要 63 (2008): 25-31, NAID:40016621269。かつてサケブリの入手が困難であった地域では、御節料理の食材として今日でも利用されている。内陸の山間部である山形県米沢市は冬場は雪に閉ざされ、住民はタンパク質が不足がちな食生活をしていた。タンパク質を補う目的で上杉鷹山1802年に相馬から鯉の稚魚を取り寄せ、鯉を飼うことを奨励した。各家庭の裏にある台所排水用の小さな溜めで台所から出る米粒や野菜の切れ端を餌にして蓄養した。現在の養殖では、主に農業用の溜め池が利用されるほか、長野県佐久地域では稲作用水田も利用されている。食生活の変化から需要の減少【原著】霞ヶ浦における魚類および甲殻類の現存量の経年変化 陸水学雑誌 Vol.74 (2013) No.1 P1-14と共に全国の生産額は年々減少し、1998年には3億6000万円ほどであったが2008年には1億5000万円余りまで減少している年次別統計 (平成10年〜平成20年)/魚種別生産額 - 内水面養殖業 農林水産省

中華人民共和国

中華料理では、山西省に鯉1尾を丸ごとから揚げにして甘酢あんをかけた料理「糖醋鯉魚」(タンツウリイユィ)があり、日本でも代表的な宴会メニューの1つとなっている。

ヨーロッパ

鯉は中欧東欧では古くからよく食べられている。特にスラヴ人にとっては鯉は聖なる食材とされ、ウクライナポーランドチェコスロバキアドイツベラルーシなどでは伝統的なクリスマス・イヴの夕食には欠かせないものである。東欧系ユダヤ教徒安息日に食べる魚料理「ゲフィルテ・フィッシュ」の素材としても、鯉がよく用いられた。しかし北米では、鯉は水底でえさをあさるために泥臭いとして敬遠されており、釣り(遊漁)の対象魚とはされても食材として扱われることは極めてまれである。ヨーロッパでは、鏡鯉から食用に品種改良され家畜化された鱗のない鯉、革鯉(Leather carp)と呼ばれる鯉が使われる。

釣り

伝承

中国では、鯉が滝を登りきるとになる登龍門という言い伝えがあり、古来尊ばれた。その概念が日本にも伝わり、江戸時代に武家では子弟の立身出世のため、武士の庭先で端午節句旧暦5月5日)あたりの梅雨期のの日に鯉を模したこいのぼりを飾る風習があった。明治に入って四民平等政策により武家身分が廃止され、こいのぼりは一般に普及した。現在ではグレゴリオ暦新暦5月5日に引き続き行なわれている。
また比喩的表現として、将来、有能・有名な政治家・芸術家・役者になるため最初に通るべき関門を登龍門と指して言うこともしばしばある。

日本書紀』第七巻には、景行天皇美濃岐阜)に行幸した時、美女を見そめて求婚したが、彼女が恥じて隠れてしまったため、鯉を池に放して彼女が鯉を見に出てくるのを待った、という説話が出てくる。

日本では古くから女性が健康(体力作り)のために鯉を食したと言う伝説や伝承があり、妊婦が酸っぱい鯉を食べて健康になり、無事、安産できたと言う伝説もある。また、御産の後に鯉を食べると母乳がよく出ると言う伝承も見られる。こうした話は東西を問わず内陸地には多い伝承である。

参考文献及び脚注

関連項目

外部リンク

Category:釣りの対象魚

wikipediaより

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