保育園

保育所(ほいくしょ『広辞苑 第七版』、コトバンクによる読み方。、ほいくじょNHK放送文化研究所・編『ことばのハンドブック 第2版』P.103では「 - しょ」「 - じょ」2通りの読みを認めている。(による)、Nursery center)は、保護者が働いているなどの何らかの理由によって保育を必要とする乳幼児を預かり、保育することを目的とする通所の施設。日本では、児童福祉法第7条に規定される「児童福祉施設」となっている。本項では、日本の保育所について解説する。

施設名を「○○保育園」とする場合も多いが、あくまでも「保育園」は通称であり、同法上の名称は「保育所」である

なお、市区町村の条例で施設名を○○保育園と定める例がある。

概要

保育所における保育では、養護教育が一体となって展開される。ここでいう「養護」とは、子どもの生命の保持及び情緒の安定を図るために保育士等が行う援助や関わりであり、「教育」とは、子どもが健やかに成長し、その活動がより豊かに展開されるための発達の援助である。ただし、「教育」に関しては、「義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとしての満3歳以上の幼児に対する教育」は除かれている児童福祉法(昭和二十二年十二月十二日法律第百六十四号)第6条の3第7項

児童福祉法には、厚生労働省児童家庭局が管轄する「児童福祉施設」として、保育所(認可保育所)を次の通り規定している。

  • 保育所は、保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者の下から通わせて保育を行うことを目的とする施設である。(第39条第1項)
    • 「乳児・幼児」とは、0歳から小学校入学前までの乳幼児。(第4条第1項)
  • 第6条の3第7項の「保育」の定義中の「教育」の規定により、「義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとしての満3歳以上の幼児に対する教育」は行わない。(幼稚園等で行われる)
  • 例外的にそれ以上の年齢児童を保育することもある。(第39条第2項)
  • 社会福祉法では、第二種社会福祉事業として規定されており(第2条第3項)、地方自治体や社会福祉法人による経営が多い。

歴史

保育施設の誕生

社会的変動の進行により農村から都市へと農民が流入する一方、旧士族や旧職人層の分化が生 まれ、少しずつ形成されつつあったスラムと呼ばれる都市下層社会の一般的生活者、つまり、苦しい生活を余儀なくされた都市における新しい貧民層がつくられた。この対策として、1882 年に 貧困児童の為の学校とは異なる「遊戯場」、また、労働の為に子どもの養育が十分に行き届いてい ない母親の為の「簡易」な幼稚園として保育所の設立を文部省が奨励し、1887 年保育施設が誕生した。そして、1895 年には民間の力によって神戸に無料の善隣幼稚園が誕生し、その後、数々の貧困児童の為の保育施設が設立されていった。この中でも「貧困幼稚園」の典型として、1900 年 に二葉幼稚園(1916 年に二葉保育園と改称する。)が開設された。当時の保育時間は 1 日 7~8 時 間とし、保育内容を「遊嬉、唱歌、談話、手技」としていたが、主に遊戯・衛生・生活習慣などの生活指導に重点をおいた保育が行われていた。現在との違いとして、当時の園児は毎日一銭を持参し、うち五厘は本人の貯金の為、残り五厘は保育料としておやつ代に充てていた。また、1909 年に内務省はこれらの施設に助成金を交付し、これらを慈恵救済事業として組織化(この組織によって最初に創られたのは大阪市の鶴町託児所)し、米騒動以後に公立託児所の設置を行うなど 文部省の幼稚園とは異なる別系統の施設として位置づけられた。

戦後の保育

1946 年の生活保護法を皮切りに教育基本法学校教育法児童福祉法等の制定実施や厚生省に児童局を労働省に婦人少年局がそれぞれ創設され、多くの法律の制定や局の創設が行われる一方、戦争によって創り出された母子家庭の生活苦は高まり、足手まといとなる幼児の子守の為学童は長欠不就学を余儀なくされ、保育所や母子寮は超満員となった。これらを嘆いた母は署名運動を起こし、保育所設置を叫び、こうした社会情勢の激変は多くの民間保育団体を結成していく引き金となった。幼稚園と保育所は幼保一元化を思考しながら二次的に制度化していった一方、保育をする上では困難を極めていた。文部省では戦後の施設の質的低下を取り戻す為、新しい教育の内容や方法に相応しい施設づくりに向けたモデル幼稚園を指定した。

一方、厚生省は依然として保育所を「保育に欠ける」ことが入所の絶対条件とし、救貧的な施設として捉えていた。保育所の保育は母親が家庭において日常的に子どもの世話をする保護養育の保育とし、幼稚園で行われている様な教育をする保育ではないという保育観を持続していた為、保育内容に積極的に介入しなかった。この状況を背景として、1953 年に日本の保育に科学的な観点を導入しようと幼稚園・保育所の保育者を主力として「保育問題研究会」が発足された。これにより保育問題は多くの国民の問題となり、保育所づくり運動も単なる増設ではなく保育時間の延長や保育内容・条件の改善要求などを含めた運動へと発展していった。

高度経済成長~現在

70 年代には、地域の保育要求を組織すると共に、「国民的保育運動」 の形成の大切さを確認し、さらに運動の展開が図られていった。 そして、保育実践も次第に深まり始めた。今や幼稚園・保育園は国民生活に必要不可欠となり保育実践も着実に前進しつつある。幼稚園と保育園との制度的関係の改善や幼保一元化に向けての具体的な取り組みは緊急をようする課題であろう。

保育の内容および機能

児童福祉施設最低基準及び保育所保育指針に基づき、年齢や子どもの個人差などを考慮した上で保育を行う。内容としては、養護に相当する「生命の保持」及び「情緒の安定」、並びに教育に相当する5領域(「健康」、「人間関係」、「環境」、「言語」、「表現」)を根本にしている。保育所では、子どもの生活や遊びを通してこれらが相互に関連を持ちながら、総合的に展開される。

保育の方向、ねらい、季節、行事などを織り交ぜて一ヶ月の保育内容をまとめた月案、一週間の保育内容をまとめた週案、一日の保育の流れをまとめた日案を保育士が作成し、それらに沿って保育を進めていくのが一般的である。

保育可能な時間は、保育所や自治体により異なる。7時から19時までが一般的であるが、22時まで開所する例も増えている。盆休み年末年始を開所するかどうかの対応も保育所や自治体により異なる。

少数ではあるが、放課後児童健全育成事業実施要綱に基づく放課後児童健全育成事業が保育所施設内で運営(2008年5月1日現在で放課後児童クラブ全体の5.5%)されている場合がある。

近年では地域の子育て支援センターが併設されているケースもあり、園庭開放やイベントや子育て相談を行っている。また入所していない児童を一時的に預かる一時保育も実施されている(詳細は保育の記事参照)。

保育所における「認可」と「認可外」

認可保育所

認可保育所とは、児童福祉法に基づき都道府県または政令指定都市または中核市が設置を認可した施設をいう。

認可保育所には、いわゆる認可保育所の他に、小規模認可保育所と夜間認可保育所があり、認可に際しては、児童福祉施設最低基準に適合している事の他に保育所の設置認可の指針 小規模保育所の設置認可の指針 夜間保育所の設置認可の基準の要件を満たす必要がある。

認可保育所に適用されている国の児童福祉施設最低基準をなくし、地方自治体の条例で定めることにするという法案が国会に提出され、議論が浮上している2010年4月13日の参議院総務委員会における山下芳生の質疑

認可外保育施設

児童福祉法上の保育所に該当するが認可を受けていない保育施設は、「認可外保育施設」または「認可外保育所」と呼ばれ、設置は届出制である。無認可保育所と呼称されることもある。

地方自治体が定めた基準を満たしたいわゆる無認可保育所について、その地方自治体が独自に助成・監督等を行う場合があり、厚生労働省では地方単独保育事業と呼称する。例えば東京都では認証保育所と呼ばれるものである。

入所要件「保育を必要とする」とは

  • 保護者の居宅外就労(フルタイム労働・パート労働・業としての農林漁業など)
  • 保護者の居宅内労働(自営・内職など)
  • 産前産後
  • 保護者の傷病または心身障害
  • 同居親族の介護
  • 災害の復旧

があげられる。

母子・父子家庭福祉の観点からこれらの世帯に対して優先順位を設ける場合もある。

また、このほかにも下記の状態が入所要件としてあげられるが、その場合は入所の優先順位が低くなる(市町村の判断による)。
  • 保護者が昼間の学校に通っているとき
  • 保護者に就労の意思があり、求職活動をしているとき(1か月間を限度としている自治体もある)

かつて保育所への入所は「保育に欠ける」家庭への「措置」として扱われていたが、現行制度上は「契約」として成り立っている。

保育料

多くの自治体で、保育料は保護者の前年度の所得や所得税住民税の課税状況と入所児の年齢から算定される。園児の入所時又は年度初めの年齢により3歳以上と3歳未満で区分する場合が多いが、「0歳児」「1, 2歳児」「3歳児」「4歳以上児」等の区分を設ける場合もある。同時に複数の子どもを保育所に入所させている場合は、入所児数に応じて保育料の減免が行われる場合が多い。

納付方法等

納付方法は市区町村によって異なる。口座振替等で直接市町村に納付する方法を採用している市区町村もあれば、保育所が集金を実施する市町村もある。なお、児童福祉法では、保育料の未納を理由に児童を退所させることはできない。未納が発生した場合は、市町村等からの督促等により納付を促すが、近年の保育料の未納額の上昇により、給与等の差し押さえ等の法的手段を講じる自治体も多い。

年齢区分

入所日からその年度が終わるまでに子供の年齢が1歳上がっても年齢の区分が変わることはない。そのため生年月日が同じ子供でも年度途中などで入所した場合は保育料が異なったり、学級が異なったりする場合もある。保育所整備を進める上で大きな障害になることが予想される。

障害児の現状

依然としてわが国では、障害児が健常児の通う保育所や幼稚園から排除されている。一緒に保育してほしいと申し込むと断られる現実がある。学校も障害児と健常児が共に学ぶ体制になっていない。2007年度から始まった特別支援教育はまだ分離教育にとどまっている。むしろ逆に分離が一層進行している。

わが国では「障害」というものを「機能・形態障害」でとらえ、法的に「身体障害知的障害精神障害発達障害」を規定しており、その原因となる障害の部分を治療し改善するしか方法はないという「医学モデル」的な観点を中心に実践する傾向にあった。そういった方法論では、当事者や家族への自己努力、自助努力に責任を転嫁してしまい、子供の全体をとらえた支援と社会参加への可能性を狭めてしまいかねない。保育に関わる専門職者の障害観によってはその子供と家族への重圧となることも可能性として考えられるのである。障害児・者の生活上の課題や問題の解決を図るために、保育という対人援助で大切なことは、いったん私たちがマイナスを見たところにプラスを見出し、失敗と感じたところに達成を見出すことを心がけるという「加点評価」の視点である。この視点が確立されなければ、子供の障害は減点の対象となり、ゆえに障害児・者は常に社会的排除・邪魔の対象として位置づけられてしまう。

現在、障害児を受け入れた場合の保育士の加配について、財政的な充実が図られようとしている。しかし、障害児3人に保育士1人や、障害児1人に保育士1人といったように、自治体によってその基準が異なっているのである。保育士の力量が経験の問題、また障害の程度や種類にもよるが、そこでの子供あるいは保育集団にあった人員配置がなされることが望ましい。これには財源の問題なども絡んでくるが、人間の尊重を第一に考えて、その子供の発達や成長を支えていく最前線にある保育としては、サービスの質を落とすことはできず、それを支えていく柔軟な仕組みを考えていかねばならない。

事件

保育所においても、児童性的虐待などの事件が発生することがある。特に男性保育士は保育士登録を取り消される割合が高く、女性保育士の20倍以上となっている

脚注

注釈

出典

関連項目

最近の動向

事件

外部リンク

Category:就学前教育

wikipediaより

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