上勝町
過疎地における新しい公共の移動手段「有償ボランティア輸送制度」
過疎地における登録会員制による新しい公共交通で福祉も担う。
事例本文
全国の過疎地に先駆けて取り組んだ
「
交通機関空白の過疎地における有償輸送可能化事業」として、
2003 年10月1日に運行が開始された
新しい公共の移動手段である。
上勝町のかつての
公共交通は路線
バスのみ。
1日5便、2〜3時間に1便(土日祭日の午後は6時間に1便)の運行状況では、
高齢化が進む(44%)過疎地だけに病院に行くのもままならなかった。
こうした状況はおそらく、日本中の多くの過疎地域が直面する問題である
。
上勝町も
過疎化が進む中、2002年には町内のタクシー業者が休業。
さらに翌2003年には徳島
バスが上勝路線廃止を
通達した。
そこで町は、2003年に国から日本で初めて「
構造改革特区」の認定を受け、
上勝町社会
福祉協会の登録
ボランティアと
自家用車などを活用した
有償
ボランティア輸送制度導入の検討を開始。
路線
バスへのアクセスや診療所通所、買い物などのための移動サービスを充実することにより、
住民へのサービス向上を図ることを目的として運営委員会を設置し、事業をスタートさせた。
仕組みはわかりやすい会員登録制度を採用。
利用者は申請者1000円、申請者の家族一人あたり年200円の年会費を支払い会員となる。
運転者の条件は、
(1)運転歴10年以上の者で、かつ74歳までの者であること。
(2)過去3年間運転免許停止処分を受けていないこと。
(3)第2種免許を持っている者。第2種免許を持っていない者については、
国土
交通大臣認定講習を受講した者。
(4)運転者として登録する者は年1回以上の基本検診を受診すること。
となっている。
過去事業開始時は上勝町
社会福祉協議会に事務局を置いていたが、
2006年からは
NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーが
シルバー人材センター事業の一環として、事務局を請け負っている。
運行は
デマンド方式で、都合のつく運転者会員が輸送にあたる。
使用車両は、運転手の私用車なら軽トラックから大型
バスまでどんな車でも使えるが、
現在の使用車両は9人乗りのワゴン車までとのことである。
利用料金は迎車料金が300円。走行料金は1kmあたり100 円で積算。
出発地または目的地が上勝町内であることが利用条件となっている。
注目すべきは料金の多少ではなく、過疎による危機感が生んだ相互扶助の制度であり、
交通機関である前に新しい
福祉政策である。
ちなみに、この制度の開始にあたり
行政が使ったお金は、
車両表示のマグネットシートを作った約5万円のみ。
これだけの費用で住民が安心して利用できる持続可能な
「結い」の
地域社会が生まれている。
開始当時の登録運転者は21人、登録利用者300人程度だった。
2年後には400人を超えるまでに増加したが、2009年3月現在は363人。
登録運転手は17人、登録車両台数は21台である。
利用状況は、2004年の1856回(2281人)を最高に、
2007年は半分の700回まで落ち込んだが、2009年は866回(1220人)に回復した。
2007年からは町外利用者も増加している。
地元住民のボランテイアドライバーから道中に聴くことができる
上勝の様々な話が県外からのお客には好評である。
なお、上勝の事例をもとに、2006年10月「道路運送法等の一部を改正する法律」が施行され、
この規制緩和によって、過疎地では運輸支局に登録することで、
登録ドライバーはお金をもらって送迎ができるようになり、
交通過疎に悩む多くの地域で助け合いの有償運送が始まっている。
自治体情報
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