飯田市
10年かけて理想を実現!「かざこし子どもの森公園」
飯田市は、県立工業高校の跡地利用問題が生じた際、住民参画で公園とすることに決定した。この公園は元の地形を活用し、あるいは再生し、10年間かけて完成させた。整備の過程もさることながら、自然環境保全、環境配慮型の管理手法を採用するほか、体験学習施設も充実し、親子で楽しめるようになっている。
事例本文
「かざこし子どもの森公園」は、飯田市の丸山地区にあった旧長野県立飯田工業高校の跡地に、
2002年4月27日にオープンした
総合公園である。
1989年に高校の移転を機に、1991年旧建設省施策「平成記念子供のもり公園事業」の指定を受け
住民参画で公園として整備することになった。
1992年に基本計画を策定、翌1993年に基本設計を完了したが、
これまでの
価値観を前提としない「未来を感じられるものにしたい」と基本設計の考え方を見直し、
多様な専門家の意見をとりいれてじっくりすすめるプロセスに変更した。
設計や施設の名称決定などには建築、
美術史、
樹木医、
環境活動家のほか、
市民からも子育て関係で活動している
市民や方言に詳しい
市民などに協力を求めるなど、
多様な声を取り入れた。
公園をはじめ
公共施設の設置には様々な要望が出されるのが常である。
しかしそれらのすべてを取り入れることは難しい。
それに、公園を実際に利用することになる将来の子どもなど、
「いまはない声なき声」をいかに設計に反映させるかを徹底的に考えた。
市はあるべき公園のビジョンを常に意識し、地道な
合意形成に努めた。
結果、建設費用は当初案の55億円から30億円に圧縮できた。
それ以上の成果として、設計や建設のプロセスに関わった多くの人々が
いまでも積極的に公園を大切に考えてくれるなど、
信頼という目に見えない
財産を得ることができている。
公園自体の特徴は整備段階と管理過程における
環境配慮である。
現在の公園には
原生林は存在しないが、長らく人手が入っていない
二次林が
およそ1ha(およそ10%)と、管理の行き届いた
里山がおよそ12ha(およそ60%)・
遊園
緑地がおよそ5ha(およそ10%)で構成されている。
整備段階ではできるだけ既存の植生や地形を尊重し、
そこにあった樹木や巨石を生かすなど「古くて新しい」公園をめざした。
例えば以前グラウンドであったところに盛り土をして、当初の山の地形を再生させた部分もある。
また、整備中に旧ため池から「ドブ貝」が発見され、子どもたちにドブ貝すくいをしてもらい、
里親になってもらったこともある。
整備完了後、そのドブ貝は再び池に戻され、現在でも生息している。
その他、喫茶室の屋上の「地続き」での
緑化、市内各地で支障となった樹木の移植、
間伐材を用いた法面整備、JR飯田線の付け替え工事で発生した枕木の再利用等、
様々な
環境配慮が随所に施されている。
それら以外にも
環境負荷を減らすため公園内の施設「おいで館」には
8kwの
太陽光発電パネルが設置されているほか、雨水貯留・利用設備、
堆肥化施設(公園内の落ち葉等を
堆肥化)も整備されている。
管理においても
二次林、
里山、公園
緑地に即し、
生態系や
環境、
利用者の健康に配慮した方法を採用している。
里山については公園整備段階から10〜20年かけて手入れをしていくことになっていたが、
このほど手入れが一巡した。
多様な生物が棲めるようにするために
間伐や
剪定を行う際、
低木・
潅木の高さをこどもの目線にあうように配慮したり、
新たに植えた
ドングリやクリの木にはリボンで目印を付けて
下草刈りで刈ってしまったりすることがないように注意している。
これらの
里山管理ででた
間伐材は、公園の体験工房での
ワークショップの材料になる。
公園
緑地に敷設されている芝生は
農薬を使わずに手作業で手入れする方法を採用している。
時間と労力はかかるが、
バッタなども生息する
ビオトープになっており、
こどももおとなも安心して利用できるスペースになっている。
公園内の施設も様々なものがある。
どれも木材がふんだんに使われ、やわらかく温かみのあるデザインである。
「かざこしなかまの館」には会議室(会議室どんぐり)やイベントなどに使える
フリースペース(わいわいホール)、絵本の
図書館(ふくろう文庫)がある。
その他、
石窯を備えたキッチン施設(食の工房)、木工作用施設(使う木の工房)、
石や砂を使った陶芸のための施設(土の工房)など、こどももおとなもワクワクできるものばかりだ。
体験イベントも豊富で、公園主催だけでも年間236のプログラムが開催され、のべ12083人が参加した。
市民による
ワークショップも年間155回/3567人が参加。
公園の職員が
市民によるプログラム実施を支援している。
自治体情報
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